春の花の花言葉

アセビの花言葉/日本のアンドロメダはアンドロメダにあらず!?

Written by すずき大和

明治時代、初めて日本の市場にトマトが入ってきたとき、人々はそれを

「赤ナス」

と呼びました。

自国にないもの(名前がないもの)が異文化圏から入ってくると、自国にある、似ているものの名前をあてがって呼ぶようになることは、どこの国でも見られます。

島国ニッポンには、独自に進化した動植物がたくさんあり、西洋にはなかった種類が、中世から近代にかけ、次々西洋にも紹介され、運ばれていきました。向こうになかったもののいくつかには、

「日本の○○○」

のような“代用呼称”が付けられました。

日本原産の東アジア固有種だったアセビの花は、近代になり西洋に持ち込まれました。あちらにあった花の中で、

アンドロメダ(Andromeda)
すずらん(Lily of the valley)

に花の形が似ていたので、

  • 「Japanese andromeda(日本のアンドロメダ)」
  • 「Japanese lily of the valley(日本のすずらん)」
  • 「Lily of the valley bush(茂ったすずらん)」

と、呼ばれました。

一方、西洋の花言葉文化が入ってきて、日本でも真似するようになりました。日本人はアセビに、ギリシャ神話の「アンドロメダ姫」に由来する花言葉を付けました。



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アセビの花言葉

アセビ全般の花言葉

『犠牲』
『献身』
『二人で旅をしよう』
『危険』

花言葉の由来

秋の夜空の星座の神話

アンドロメダと聞くと、私たち日本人は、花の名前ではなく、星座の名前のほうがピンと来る人が多いかもしれません。

秋の夜空に登場する星座の人物がたくさん出てくるギリシャ神話のエピソードは、プラネタリウムなどでも繰り返し解説されています。

“エチオピアの王ケフェウスと王妃カシオペアの間の姫アンドロメダは、それはそれは美しい娘でした。ある時、カシオペア妃は、娘自慢の勢いで

「アンドロメダは、ネレイドより美しい」

といってしまいます。

ネレイドは海の神ポセイドンの孫の妖精たちです。カシオペアの言葉に激高したネレイドたちはポセイドンに訴え、クジラの化け物ケートスをエチオピアに差し向けてもらいます。怪物の襲来に困ったケフェウス王は、泣く泣く国の平和のためにアンドロメダをケートスの生贄に差し出します。

海岸で縛られていたアンドロメダにケートスが襲い掛かろうとしたその時、勇者ペルセウスが天を掛ける馬ペガサスに乗って通りかかります。ペルセウスは魔女メドゥーサを退治してきた帰りでした。メドゥーサの首を取り出したペルセウスは、ケートスの目前に突き付けます。メドゥーサと目があったケートスはたちまち石になってしまいました。

アンドロメダは無事救出され、ペルセウスと結婚しました。”

『犠牲』
『献身』

これらは、国のために生贄になろうとしたアンドロメダの行為にちなみます。

『二人で旅をしよう』

これは、ペルセウスとアンドロメダの幸せな行く末を指す、という説があります。

一方で、春に花咲くアセビを見ていると、旅心が湧いてくる、という解説もあります。

馬も酔ってしびれてしまう毒草

アセビには、全体に「アセボトキシン」という神経毒の成分があり、動物や昆虫の食害にあいにくい特性があります。

おかげで、食べ物の少ない冬も常緑の葉や蕾(アセビの花は蕾で越冬します)をつけながら、食い荒らされることなく綺麗に咲くのです。

しかし、誤って家畜のえさなどに混ざってしまうと、しびれて酔っぱらったようにフラフラしてしまうそうです。

“馬が酔っぱらう木”

と書いて「馬酔木(アセビ)」なのは、そんな理由です。

『危険』

は、毒性に対する注意喚起の花言葉です。

アセビってどんな花?

世界に原種は10種類

アセビ属(Pieris)は、北半球の東アジアからヒマラヤにかけてとアメリカ南東部に多く自生していますが、原種は亜種を含めて10種類くらいしかありません。アメリカ原産のアセビは日本のアセビと大変よく似ています。

ジャパニーズ・アンドロメダの数種がアメリカにわたり、最近はアメリカアセビとのハイブリットもいくつか見られるそうですが、ヨーロッパの育種家にはあまり人気がなく、世界的には地味で希少な花です。

アンドロメダはどんな花?

アンドロメダ(Andromeda)は、ヒメシャクナゲの属名です。日本でも東北地方や北海道の野山に自生しています。

ヒメシャクナゲ


分類学では、昔はアセビもヒメシャクナゲの仲間とみられており、アンドロメダ属でした。Japanese andromedaの名が付いたころは、アンドロメダは確かにアセビの花のことだったと思われます。少なくともアメリカでは代用呼称ではなかったのです。

その後、研究が進み、アセビ属が分化した後も、アンドロメダの呼称は残りました。

とはいえ、ヒメシャクナゲが正式なアンドロメダですから、間違えないように、欧米の生物学分野では、学名の「ピエリス(Pieris)」や、品種名で呼ぶことが多くなっています。

園芸や花言葉のサイトでは、まだ旧呼称が多く、カッコ書きで

「Andromeda(Pieris)」
「Lily of the valley(Pieris)」

という表記が目立ちます。

しかし、日本のアンドロメダについては、馴染みがないせいか

「Japanese pieris」

に改められることなく、アンドロメダとすずらんの呼称のまま現在に至っています。
(学名は、ちゃんと「Pieris japonica」です)

ということで、英語やフランス語の「アンドロメダの花言葉」は外国のアセビのことではありません。でもやはり神話に由来した花言葉です。

花言葉の成り立ちって、アンニュイなものなのですよ。

アセビの基本データ

分類: ツツジ科アセビ属
学名: Pieris japonica ピエリス・ジャポニカ
和名: 馬酔木
別名: アシビ、アセボ
英名: Japanese andromeda,Japanese lily of the valley,
Lily of the valley bush
開花時期: 3月~5月 春の花
花色: 白、ピンク
樹高: 1.5~2.5m 常緑低木
原産地: 日本、中国、台湾


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筆者情報

すずき大和

花に心があったら、自分の花言葉についてどう思うだろう?と、変なことが気になる変わった子供が、成長してライターやってます。花言葉の由来をヒモ解いていくと、花より人の心が見えてきます。花言葉を添えて花を贈るなんて、日本人にはハードル高い行為ですが、まあとりあえず、のんびりウンチクを楽しんでもらえれば幸いです。