「ボケ」ってジョークみたいな花名だなぁ、と、初めて聞いた時は思いました。
べつに、コンビの「ツッコミ」って花があるわけでもなく、認知症にも関係ありません。
原産国中国でバラ科の果樹の表記「木瓜」がそのまま伝わり、「もっこう」という読みが「もっけ」「もけ」と変化して、最後は「ぼけ」になったと見られています。木瓜の由来は、瓜のような形の果実だったことから付きました。
現在の日本では、ボケは、果実より花を楽しむ庭木や盆栽のイメージが強い園芸植物です。品種は多い方で、熱心に育てる園芸家もいますが、一般的にはツバキや菊、バラなどに比べて地味な印象の花かもしれません。
が、木瓜の花と実の断面がモチーフとなった“木瓜紋”は、日本の五大紋のひとつとなっており、中でもボケの五弁の花を模ったといわれる
「五つ木瓜(いつつもっこう)」
は、日本人の多くから敬愛されている戦国武将“織田信長”の家紋として有名です。
ボケは、相反するような異なる意味の花言葉を複数持っていますが、いずれも由来がはっきりわかっていません。信長に由来すると思われるものもありますが、調べていくと、見た目が似た品種との区別があいまいで、実は謎の多い樹木あることがわかります。
もくじ
ボケの花言葉
『先駆者』
『指導者』
『平凡』
『退屈』
『早熟』
『妖精の輝き』
『魅惑的な恋』
ボケってどんな花?
マニアに好まれる園芸種
ボケの渡来時期は、平安時代初期といわれています。すぐに帰化して広く自生するようになりますが、園芸種としてはそれほどポピュラーではなく、品種も少ないものでした。
大正時代に突如、新潟県新潟市と埼玉県川口市を中心に“ボケブーム”が盛り上がります。現在盆栽などで有名な「東洋錦」「日月星(じつげつせい)」という品種がこの時期生まれました。その後、昭和40年ごろに2回目のブームが起きて、以後数多くの品種の育種が進みました。
現在は200種以上の品種があり、寒咲き(11~2月)から春咲き(3~4月)まで、長い期間多くの品種を楽しむことができます。どちらかというとマニア向けというか、ボケを専門に探求する園芸家は決して少なくなく、特に花盆栽の分野では根強い人気があります。
花はボケ、実はカリン、街路樹はマルメロ
果実はとても良い香りを放ちますが、果肉が硬くて酸っぱいので、生食には向きません。主にジャムや果実酒にされてきました。レシピ投稿サイトなど見ると、庭にボケを植えている人が、秋に実を収穫して加工した自家製レシピが複数見つかります。
ボケの実
ボケの実は、昔から、疲労回復や利尿効果のある生薬として使われていました。乾燥させたものは「木瓜実(もっかじつ)」と呼ばれる漢方薬にもなっています。
が、しかし、中国の木瓜はボケだけでなく“カリン”や日本原産の近種“クサボケ”も含めて呼んでいます。更に、バラ科ではない“パパイヤ”も中国語では木瓜です。
そのため、日本薬局方外生薬規格では、“木瓜=カリン”と規定されています。
そのせいかどうかわかりませんが、現在青果市場で流通している木瓜は、ボケと表示されていても、実際はカリンの実です。
カリンの実
ついでにいうと、街路樹として植えられている木瓜やカリンは、ほとんどがマルメロです。マルメロ(quince)は欧州でポピュラーなバラ科の果樹ですが、実はボケの英語名は
「ジャパニーズ・クゥインス(Japanese quince)」です。
マルメロの実
木瓜がストレートにボケを指しているのは、花木の園芸種の場合だけです。
ひとことに「木瓜」「ボケ」といっても、ちょっとややこしいのです。
織田木瓜紋についても、もしかしたらモチーフはボケの花ではなく、カリンの花や実だったのかもしれません。その辺りは、実際は謎です。
花言葉の由来
『先駆者』『指導者』
これは、織田信長にちなんだ花言葉ではないかといわれています。
ちなみに織田木瓜紋とは、こちら。八坂神社の家紋にも使われています。
『平凡』『退屈』
花言葉サイトの中には、
と、書いてあるものもありますが、本当のところはわかりません。
『早熟』
この由来情報は全く見つかりませんでした。
という特徴があるので、もしかしたらそこから生まれた意味かもしれません。
『妖精の輝き』『魅惑的な恋』
これもさっぱりわかりません。そんなキラキラした印象の花ではなく、地味で堅実な見た目に感じますが、果実の甘い芳香のイメージでしょうか?
信長の生きざまと神秘の最期?
ボケの花言葉は謎だらけです。
決して平凡ではない才を持つ信長さんの、戦国の世を駆け抜けた生きざまは、確かに激しく輝いていました。本能寺の変の真相は、謎に包まれた部分もなお多く、歴史の神秘のひとつです。ボケのアンニュイさは、そんなミステリーと重ね合わせると、ちょっと魅惑的な気もしてきます。
分類: バラ科ボケ属
学名: Chaenomeles speciose チアナメルス・スペシオーサ
和名: 木瓜
別名: 唐木瓜(カラモッコウ)
英名: Japanese quince, Flowering quince
開花時期: 11~2月(寒咲き)、3~4月(春咲き)
花色: 赤、ピンク、白など
樹高: 1~3m 低木
花持ち期間: 5~7日
原産地: 中国