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月下美人の花言葉/命短い純白の大輪の花、繊細だけど官能的

Written by すずき大和

植物をこよなく愛されていた昭和天皇がまだ皇太子だった時代、台湾で初めてこの花を見て、同行の田健次郎駐在大使に花名を訪ねました。田氏は、

「月下の美人にございます」

と答えたそうです。ハイセンスなユーモアのある人ですね。

以後、そのまま正式な和名となりました。

田氏は、花の特徴や、英語での俗称が

「A Queen of the Night(夜の女王)」

であることを知っていたのかもしれません。

月下美人の蕾は、陽が沈んでから強い香りを放ち始め、夜8時くらいから咲き始めます。輝くような真っ白い花を満開に開くのはほんの数時間で、午前3時ころ、空が白む前には花を閉じ、日の出の頃にはすっかり色も香りも失ってしぼんでいます。

6~11月の間、間隔を開けて数回花を咲かせますが、ひとつの花の命はわずか一晩だけです。

儚いものに趣を感じる日本人は、短い命を健気に感じる花言葉をつけました。

西洋人は、夜中に咲く妖艶な美しさが怪しげに映り、官能的な花言葉をつけました。



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もくじ

月下美人の花言葉

日本の花言葉

『儚い美』
『儚い恋』
『繊細』
『秘めた情熱』
『強い意志』
『ただ一度だけ逢いたくて』
『艶やかな美人』

西洋の花言葉

『危険な快楽(dangerous pleasure)』(英)
『快楽(plaisir)』(仏)
『肉感的(voluptueux)』(仏)

月下美人てどんな花?

実はサボテンの仲間

月下美人の英語名は、

「Dutchman’s pipe cactus(ダッチマンズ パイプ カクタス)」

直訳すると、“オランダ人のパイプサボテン”です。

もともとメキシコの熱帯雨林原産のサボテンの仲間です。

月下美人は「クジャクサボテン属」に含まれます。真っ白い花を真夜中に咲かせます。他のクジャクサボテンの仲間は黄色やオレンジ、ピンクなど多くの色があり、昼間咲きますが、花や茎・葉の形は月下美人とそっくりです。

見た目はちょっとグロテスク

外見はサボテン科らしい独特の形をしています。よく例えられるのは、

“波打った昆布”
“きしめん”

葉のように平べったいけれど肉厚な茎です。

その茎から下向きに垂れ下がるように蕾がつきます。開花日が近づくと蕾が上に持ち上がって、大きく膨らんできます。この形がパイプみたいに見えるわけです。

花の外側には赤い細長い“苞(ほう)”という葉の変形したものがたくさんついていますが、まるで不気味な触手のように、蕾を包んでいます。なんだか蛇の舌のようにも見えます。

月下美人全体図


月下美人蕾


月明りの下の純白の美人、というと、日本人は楚々(そそ)として儚げにたたずむ線の細い姿を想像するかもしれませんが、実物は熱帯植物らしい、ちょっとグロテスクともいえる強烈なインパクトがあります。

コウモリ媒花

月下美人が夜中に咲き、こんな形をしているのは、ジャングルに住む夜行性のコウモリに受粉を助けてもらうためです。

蕾が咲く時にちょっと上向いてくるのは、その方がコウモリがホバリングしながら蜜を吸いやすくなるのです。強い芳香は、コウモリに開花を知らせるためです。

花言葉の由来

妖艶な魔性の女!?

ジャングルの中で、そんなグロい腕の先に20㎝以上ある大きな花を咲かせている姿は、あでやかというより、もうなまめかしいくらいです。ましてや、コウモリが花の蜜をなめていたら・・・・

そりゃ、夜の森を統べる邪悪な女王を連想するのは無理もなく、輝く美しさは、魔性の女が仕掛けてくるハニートラップの誘惑にしか見えません。

『危険な快楽』
『快楽』
『肉感的』

西洋人がこんな花言葉を付けた気持ちはよくわかります。

花名のイメージが先行?

昭和天皇が即位される頃には、日本でも栽培する人が出てきていました。年に数回しか花が咲かないので、開花がニュースになることもありました。

が、テレビがあったわけではないので、その全体の姿や蕾の赤い触手を知らずに、花名と純白の美しい花が真夜中に咲く情報が先に広まり、楚々とした美人像の連想が先行してしまったのかもしれません。

『繊細』

は、そんなイメージのたまものです。

『儚い美』
『儚い恋』

は、短い花の命に由来します。

『秘めた情熱』
『強い意志』

は、強い芳香のイメージです。

イメージ先行のひとつの表れとして、実際の生態とは異なる伝説も多く流布しています。

マユツバ1,「すべて同じ日に咲く」

最初は日本に持ち込まれた1株を挿し木で増やしていたため、つまり全部クローンだったので、咲く時季が近くなったようです。が、実際はクローンでも個体差はありました。

マユツバ2,「年に一度しか咲かない」

『ただ一度だけ逢いたい』

の花言葉は、ここからきています。が、間は空きますが、2、3回は蕾をつけます。

マユツバ3,「新月の夜しか咲かない」or「満月の夜しか咲かない」

月齢には全く関係ありません。

月下美人は食べられる

月下美人は、遺伝子が異なる個体の花粉を受粉しないと結実しません。ので、全部同じクローンしかなかった時は、日本では実がなりませんでした。が、西洋ではドラゴンフルーツみたいな果実を食用にしていました。

また、中国や東南アジアでは、花も食用にしていました。

海外では、案外身近な花だったようです。日本人がイメージ先行してしまったのは、見たことない花なのに、天皇陛下絡みの命名エピソードもあって、想像がどんどん神秘的に美化されてしまったのかもしれません。

月下美人の基本データ

分類: サボテン科クジャクサボテン属
学名: Epiphyllum oxypetalum エピフィルム・オクシペタラム
和名: 月下美人(ゲッカビジン)
英名: Dutchman’s pipe cactus
開花時期: 6~11月 夏~秋の花
花色: 白
草丈: 1~2m 多肉植物(サボテン)
花持ち期間: 一晩数時間
原産地: メキシコ熱帯雨林


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筆者情報

すずき大和

花に心があったら、自分の花言葉についてどう思うだろう?と、変なことが気になる変わった子供が、成長してライターやってます。花言葉の由来をヒモ解いていくと、花より人の心が見えてきます。花言葉を添えて花を贈るなんて、日本人にはハードル高い行為ですが、まあとりあえず、のんびりウンチクを楽しんでもらえれば幸いです。