夏の花の花言葉

ツユクサの花言葉/はかなさの中に見える日本人の美学

Written by すずき大和

ツユクサは、日本中どこでも見られる、畑の脇や道端などに生えている雑草です。梅雨の頃になると、地を這うように枝分かれしながら繁茂し、気づくと30cmくらいの高さのこんもりとした塊となって、2cmほどの小さな青色の花をたくさん付けます。

日本で一般的に「露草(ツユクサ)」の和名で呼ばれるあの青い花は、ツユクサ属の中でも最も代表的な品種で、日本原産と見られています。今でこそ雑草扱いですが、古代より人々に愛されてきた野の花で、万葉集の中にも多く詠われています。

花期は初夏から初秋までと長いですが、ひとつひとつの花は、朝開くと、たった半日の命で昼頃にはしぼんでしまいます。その“はかなさ”が、詫びさびを尊ぶ日本人の心に響くようです。あの青色は、「露草色」という和の色名にもなっています。

そんなツユクサには、繊細な意味合いの花言葉がいろいろ付いています。



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もくじ

ツユクサの花言葉

ツユクサ全般の花言葉

『わずかの愉しみ』
『恋の心変わり』
『敬われない恋』
『密かな恋』
『小夜曲(セレナーデ)』
『なつかしい関係』
『尊敬』

ツユクサってどんな花?

東洋のツユクサは欧州では侵略種

ツユクサ科は世界で600種くらいあるといわれますが、

  • 主に東アジア原産のツユクサ属(学名:Commelina コメリア)
  • アメリカ原産のムラサキツユクサ属(学名:Tradescantia トラデスカンティア)

の2系統で半分以上を締めています。どちらも花期が等しく花姿も似ているので、ヨーロッパの国ではまとめて一括りのグループと認識されています。が、ムラサキツユクサ属の仲間は園芸種として植栽されることが多く、花の小さなツユクサ属は、その強い繁殖力で帰化したものが多いものの、若干やっかいな侵略的外来種扱いの傾向も見られます。

日本の露草(学名「Commelina communis コメリナ・コモニス」)は、海外ではほぼ野草・雑草として帰化しています。

花言葉はありますが・・・

英語では、

  • 園芸種(主にアメリカ系)は「Spiderwort(蜘蛛の草)」
  • 野草としてよく見られるほう(主にアジア系)は「Dayflower(1日花)」

となんとなく呼び分けています。

花言葉は、英語では、まとめて「Spiderwortの花言葉」として認識されています。ツユクサ属の中にも園芸種はあるのですが、日本に花言葉文化が取り込まれた時は「ムラサキツユクサの花言葉」として輸入されました。

そして、私たちにとっては古くからなじみ深いツユクサには、日本人的解釈のオリジナル花言葉が付けられました。

花言葉の由来

朝咲き夕は消ぬる

万葉集にある句の出だしです。

「朝(あした)咲き 夕(ゆうべ)は消(け)ぬる つき草の
 消(け)ぬべき戀(こひ)も 吾(あれ)はするかも」

つき草(月草)はツユクサの別名です。

“朝に咲いて、夕方にはしぼんでしまう月草のような、
(身も心も)消え入りそうな恋を、私はするのでしょう”

という、切ない片思いの歌です。

当時、雅な世界では、ツユクサは「はかなさ」の象徴でした。以下は、そんな意味合いから発生している花言葉です。

『わずかの愉しみ』
『恋の心変わり』
『敬われない恋』
『密かな恋』
『小夜曲(セレナーデ)』

花びら3枚のうち1枚だけ小さい

ツユクサ属の花には花びらが3枚あるのですが、1枚だけがとても小さくわかりづらいという、変わった構造をしています。

ツユクサ科はみな花びら3枚、おしべ6本の構造です。ムラサキツユクサ(上)とツユクサ(下)を比べてみてください。花の形の違いがよくわかるでしょう。

紫露草


露草


花名のエピソード

ツユクサ属の学名「Commelina(コメリナ)」は、オランダの高名な植物学者

  • 「ヤン・コメリン(Jan Commelin )」(1629~1692)と、
  • その甥「カスパル・コメリン(Caspar Commelin )」(1668~1731)

の名前からとりました。

コメリン家には3人の植物学者がいました。2人は名を遺す業績を上げたのに、もう1人は早くに亡くなってしまいました。3枚のうち1枚だけ大きく育たなかったツユクサの花びらのようだ、という点にちなんだそうです。

3人目のコメリン先生を追悼する意味で、

『なつかしい関係』

という花言葉を付けたのだといわれています。

聖母マリア

『尊敬』

この花言葉だけは、英語のSpiderwortの花言葉

『esteem not love(恋愛抜きの尊敬)』(英)
『regard(敬意)』(英)
『amiration(賞賛)』(英)

からきました。西洋では、ツユクサの青色は、聖母マリアの衣の色と同じだといわれており、聖母への敬愛を表す花言葉が付いています。

一説には、青紫色は日本では高貴な位を示す色だから、と解説する情報もあります。どちらにしろ、花色に敬意を感じて付けられた花言葉です。

一方で『敬われない恋』などという言葉もあるので、ややこしいですね。まあ贈答用にする花ではないので、いいのですが・・・。

ツユクサの基本データ

分類: ツユクサ科ツユクサ属
学名: Commelina communis コメリナ・コモニス
和名: 露草(ツユクサ)
別名: 蛍草(ホタルグサ)、月草(ツキクサ)、
帽子花(ボウシバナ)、青花(アオバナ)
    鴨跖草(オウセキソウ)(生薬名)
英名: Asiatic dayflower(C.コメリナ)
Dayflower, Spiderwort(ツユクサ科全般の総称)
開花時期: 6~9月 夏の花
花色: 青(露草色)、白
草丈: 15~50cm 一年草
花持ち期間 1日(早朝から昼まで)
生息地: 世界中の温帯地域
原産地: 日本ほか東アジア


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筆者情報

すずき大和

花に心があったら、自分の花言葉についてどう思うだろう?と、変なことが気になる変わった子供が、成長してライターやってます。花言葉の由来をヒモ解いていくと、花より人の心が見えてきます。花言葉を添えて花を贈るなんて、日本人にはハードル高い行為ですが、まあとりあえず、のんびりウンチクを楽しんでもらえれば幸いです。