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フジバカマの花言葉/偽物?本物?1300年前とは違う秋の七草

Written by すずき大和

秋の七草のひとつに数えられている「フジバカマ」の花をご存知ですか?

1m以上にもなる背の高い多年草で、まっすぐ直立した茎の先端が細かく枝分かれして、小さな花をたくさん咲かせます。

紫や白の粒々がいっぱいの蕾の姿も可愛らしいですが、花が開いていくと、中から長いめしべが飛び出して、髭のようにフワフワもじゃもじゃした見た目になります。

ユニークなビジュアルで草丈の長いフジバカマは、生け花に使われる切り花や、ガーデニングの素材として人気があります。

が、店頭に流通しているのは、実は本物のフジバカマではありません。近種と掛け合わせて作られた園芸種で、野山に見られる自生種の多くもこれが野生化したものです。

遠く万葉の世から歌に詠われてきた秋の七草の「藤袴(フジバカマ)」は、現在は準絶滅危惧種で、自生している姿ももうなかなか見られない、貴重な花となっています。



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もくじ

フジバカマの花言葉

フジバカマ全般の花言葉

『ためらい』
『躊躇』
『遅れ』
『延期』
『あの日のことを思い出す』
『優しい思い出』

花言葉の由来

ゆっくり咲き揃っていく花

『ためらい』
『躊躇』
『遅れ』
『延期』

ひとつの茎の先端には、小さな蕾が数十~百個以上固まって付きます。が、すべての花が一度に咲かず、毎日数輪ずつ、時間をかけて順々に咲いていきます。全部咲き揃うまで1週間くらいかかるので、そんなじれったい開花の様子から生まれた花言葉です。

フジバカマ花アップ


お姫様伝説

フジバカマの花名の由来として、伝えられてきた逸話があります。

“ある秋の夕方、雨の中をひとりの姫が涙を流しながら野辺をさまよっていました。姫があまりに見目麗しかったので、誰も近づき声をかけることができませんでした。雨は一晩降り続きました。

翌朝、心配になった村人たちが野辺に行ってみると、姫がいた場所に美しい藤色の花が咲いていました。村人たちは、お姫様が花になってしまったのだと思いました。花色が、姫が着ていた袴の色と同じ藤色だったので、人々はこの花を「藤袴(フジバカマ)」と呼ぶようになりました。”

『あの日のことを思い出す』
『優しい思い出』

これらの花言葉は、逸話を語り伝えていった村人たちが、あの夜のお姫様の美しさを思い出している心情を表したものです。

フジバカマってどんな花?

古代の秋の七草

フジバカマの仲間であるヒヨドリバナ属(ユーパトリウム)は、広くアジアから北アメリカの温帯地域に分布する多年草(一部は低木)です。亜種や変種も含めると世界に数百種あると思われます。

奈良時代以前に詠まれた歌を集めた日本最古の歌集「万葉集(まんようしゅう)」の中に、秋の七草は登場します。ユーパトリウムの祖先は、元々は中国大陸原産と見られていますが、古代から既に野山の水辺などに広く自生していたフジバカマは、帰化・交配の末に根付いた在来種といっても良いでしょう。

学名も

「Eupatorium japonicum ユーパトリウム・シャポニクム」
(意味:日本のユーパトリウム)

と、されています。

しかし、時代が進み、開発によって天然の水辺が減少していくのに伴い、フジバカマは激減していきました。21世紀の現在、環境省のレッドリストに載るに至ったのです。

偽物フジバカマ?

そんなわけで、現在、野生のフジバカマを見つけることはとても稀です。

ネットの写真投稿サイトやフリー写真素材などに「フジバカマ」として掲載されている画像の多くは、同じヒヨドリバナ属の

  • ヒヨドリバナ
  • サワヒヨドリ
  • サワフジバカマ

の写真です。どれも見た目はとてもフジバカマに似ています。

1,ヒヨドリバナ

ヒヨドリバナ


花はフジバカマとそっくりです。フジバカマは茎の下のほうは葉が深く3裂していますが、ヒヨドリバナは葉が裂けていません。

2,サワヒヨドリ

サワヒヨドリ


ヒヨドリバナより草丈も花もやや小ぶりで、葉は3裂せず、葉茎がありません。また、ヒヨドリバナより葉の縁のギザギザがやや深いです。

3,サワフジバカマ

サワフジバカマ


園芸種としてサワヒヨドリとフジバカマを掛け合わせて作られた品種です。現在園芸店で「フジバカマ」として流通している花はほぼこれです。

古来のフジバカマは茎が緑色で、花のすぐ下の方は、葉が3裂していません。一方、サワフジバカマは花色も茎も赤味が強く、花の下まで葉は3裂しています。

本来のフジバカマの画像と比べて見てください。

フジバカマ


イラストで描かれるフジバカマもサワフジバカマっぽいものがほとんどで、実質現代のフジバカマはこの花のことといって構わないでしょう。

花言葉の範疇としても、両者が含まれているのは明らかなので、基本データの学名には、フジバカマのシノニム(同じ種や属の植物が別名でも登録されている例)と、サワフジバカマの分も加えておきます。

フジバカマの基本データ

分類: キク科ヒヨドリバナ属
学名: Eupatorium japonicum
    ユーパトリウム・ヤポニクム(フジバカマ)
    Eupatorium fortune
    ユーパトリウム・フォーチュネイ ※シノニム
    Eupatorium × arakianum
    ユーパトリウム・アラキアヌム(サワフジバカマ)
和名: 藤袴(フジバカマ)
    沢藤袴(サワフジバカマ)
別名: 香草(カオリグサ)
    沢蘭(サワラン)
    蘭草(ランソウ)※生薬名・中国名
英名: Thoroughwort, Boneset ※属全体の花名
開花時期: 8~11月 夏~秋の花
花色: 淡紅、紫、青、ピンク、白
草丈: 50~180cm 多年草
花持ち期間: 5~7日
生息地: 東アジア
原産地: 日本、朝鮮半島、中国


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筆者情報

すずき大和

花に心があったら、自分の花言葉についてどう思うだろう?と、変なことが気になる変わった子供が、成長してライターやってます。花言葉の由来をヒモ解いていくと、花より人の心が見えてきます。花言葉を添えて花を贈るなんて、日本人にはハードル高い行為ですが、まあとりあえず、のんびりウンチクを楽しんでもらえれば幸いです。