♪知床の岬に ハマナスの咲くころ・・・
知床旅情の歌いだしに登場するハマナスの花は、北海道の県の花です。
ハマナスは、日本や中国など、東アジアの温帯から冷帯にかけてのエリア原産で、砂地に多く群生するバラの原種のひとつです。原種というと、品種改良された園芸種に比べて、たいていは小さく、シンプルな花が多いのですが、ハマナスは、バラ科の中で最も大きな花(直径6~10㎝)を咲かせます。
日本では、群生地は北海道の他、京都の天の橋立、石川県や宮城県の海辺など、風光明媚な観光地になっている所が多く、心に残る美しい眺めから生まれた花言葉がいくつも付いています。
もくじ
ハマナスの花言葉
ハマナス全般の花言葉
『悲しくそして美しく』
『照り映える容姿』
『あなたの魅力にひかれます』
『香り豊か』
『旅の楽しさ』
花言葉の由来
旅情の光景
花色は「紅紫色(こうししょく)」とか、「マゼンダ」と呼ばれる紫に近い赤色で、5枚の花びらの一重咲きのものがポピュラーですが、中には白い花の品種や八重咲のものもあります。寒冷地や海辺に大輪の鮮やかな花が群生する光景は、雄大で素朴な自然の癒やしを感じる眺めです。
『照り映える容姿』
『あなたの魅力にひかれます』
これらの花言葉を聞くと、北海道や東北、北陸の澄んだ美しい海の色をバックに、紅紫色の花色が映える様子が目に浮かぶようです。
『旅の楽しさ』
それらの観光名所を次々と想像しながら、旅心がうずいてくる人も多いでしょう。
ひとつひとつの花の命はたった一日
初夏から夏の終わりまで、花期は夏いっぱいあり、群生地では毎日次々と新しい花が咲いていきます。が、ひとつひとつの花の開花期間はわずか1日しかなく、しごく短命な花なのです。
『悲しくそして美しく』
大きく鮮やかに、美しく咲き誇りますが、その命ははかない、ということで、戦後すぐの時代の映画のタイトルのような花言葉となりました。ちょっと感傷的な趣です。
ハマナスってどんな花?
果実は国産のローズヒップ
ハマナスは漢字で書くと「浜茄子」ですが、ナスの仲間ではありません。
もともとは、「ハマナシ(浜梨)」と呼ばれていたのがなまって「ハマナス」になり、茄子の字は後からあてがわれたようです。
花の後には甘酸っぱい赤い実がなるのですが、この味がちょっと梨に似ていたので、海岸近くの砂地に群生する梨、という意味でハマナシになったといわれています。
バラの果実は総じて
「ローズヒップ」
と呼ばれ、ビタミンC豊富で美白効果や抗酸化作用も高く、花と共に加工された真っ赤な色のハーブティーなど、健康・美容食品によく使われています。
世界の市場で流通しているローズヒップは、作物として生産されているイヌバラの実がほとんどです。が、日本のハマナス自生地の多くでは、昔からハマナスの実や花を食用や生薬として利用してきました。今も、名所の観光地では、ジャムや果樹酒、お茶などを名産品として販売しています。
ジャパニーズ・ローズヒップは、香りは花に比べると弱いですが、ほどよい酸味と甘みが好まれ、のど飴や菓子類もお土産として人気があります。産地の人による、料理投稿サイトなどへの、ジャムやお菓子のレシピの公開もいくつも見られます。一部が青果として市場に出ることもあるようです。
日本のハマナス、海を渡ったハマナス
日本のハマナスは、英語で
「Japanese rose(ジャパニースローズ)」
とも呼ばれています。
江戸時代にオランダ人医師のシーボルトによって、他のいくつもの花の原種と共にヨーロッパへ持ち込まれました。ハマナスは寒さに大変強い品種だったので、ヨーロッパ各地へ広まり、多くの園芸品種の交配親になりました。
やがて北米にも伝わると、人気の観賞用園芸種となりました。特にニューイングランド地方では、海岸近くで多く栽培され、今ではすっかり帰化しています。
一方、日本国内での野生の群生地は、年々縮小し、生花市場では園芸用の改良種を栽培したものが出回っています。宮城県や福島県ほか、いくつもの自治体では、野生の原種は準絶滅危惧種に指定され、広大な群生地はなくなりつつあります。
雅子妃殿下の御印にもなっているハナマス、日本人にとっては郷土の風景として印象深い花のひとつです。今後も自生地を大事に守っていきたいものです。
分類: バラ科バラ属
学名: Rosa rugosa ロサ・ルゴサ
和名: 浜茄子(ハマナス)、浜梨(ハマナス)
別名: 浜梨(ハマナシ)
英名: Ramanas rose,Japanese rose,Rugosa rose
開花時期: 5~8月 夏の花
花色: 赤、ピンク(マゼンダ)、白
草丈: 1~1.5m 落葉低木
花持ち期間: 1日
原産地: 東アジア温帯~冷帯地域