くさかんむりに秋と書く「萩(ハギ)」は、秋の七草の筆頭にあげられる、日本の野山に見られる代表的な秋の花です。
自然のおもむきというか、素朴な田舎らしい味わいのある様子を「野趣(やしゅ)」と表現しますが、ハギは、野趣ある日本の花として、古代から愛されてきました。日本最古の歌集「万葉集」の中には、ハギを詠んだ歌は141首もあり、花の歌の中で最多です。
生け花の世界でも、しなりのある丈夫な枝に、蝶のような形の花がたくさん付く姿の“品の良さ”と“インパクト”が好まれ、小枝が花材としてもよく使われています。最近はアレンジメントにも使われるので、プレゼントするのに花言葉もちょっと気にしてみましょう。
もくじ
ハギの花言葉
ハギ全般の花言葉
『思案』
『内気』
『想い』
『物思い』
『過去の思い出』
『柔軟な精神』
『柔らかな心』
『前向きな恋』
ハギってどんな花?
もしゃもしゃの茂み
ハギは落葉低木に分類されていますが、実は本当の木ではありません。しなやかな細い枝がたくさん分かれていますが、あれは茎が木質化したもので、毎年冬には地上の枝は枯れ、翌年また根本から新しい新芽が伸びる、多年草のような植物です。
毎年新芽が伸びてくる様子から、「生え芽(はえき)」と呼ばれ、一説では、それが「ハギ」という名前の由来といわれています。
1年でたくさんの枝が伸び広がるハギは、群生するともしゃもしゃの茂みのようになるので、英語では
「Bush clover(クローバーの茂み)」
と呼ばれています。
ヤマハギとミヤギノハギ
ハギはマメ科ハギ属全般の総称です。大きく分けると東アジア原産のヤマハギ亜属と、北米産のハギ亜属に分かれ、世界中で40種以上あります。
日本では、東アジア系の多くの品種が自生しています。最も代表的なのは、ピンクや明るい紫色の花が咲く「ヤマハギ」です。万葉の時代のハギはすべてこれでした。
画像を検索すると、ヤマハギより花期が長めで、枝がしだれ気味になる「ミヤギノハギ」の写真もたくさん出てきます。花色はピンクもありますが、全体的に赤味の濃い紫紅色の花が咲く傾向があります。
花言葉の由来
ゆらゆらと儚くそよぐ姿
『思案』
『内気』
『想い』
『物思い』
『過去の思い出』
アメリカ人にはもしゃもしゃに見えるようですが、細い枝がしなって風に揺れる様は、万葉の時代から、日本人には頼りなげで繊細、かつ儚い印象が強かったようです。
「詫びさび」を好む日本人の美意識を刺激する、控えめで細やか、思慮深い花のイメージが、花言葉になりました。
しなやかさ・たくましさ
『柔軟な精神』
『柔らかな心』
儚さを覚える一方で、1年で2mにも伸び広がる生命力や、丈夫にしなる枝の様子からは、たくましくしたたかな適応力も感じられます。そんな柔軟性ある知性的なイメージが表現された花言葉です。
雅な恋のアイテム
『前向きな恋』
万葉の時代の後半、奈良時代くらいになると、貴族や豪族と庶民の身分や社会の形もだいぶ落ち着いてきます。
世は母系社会で通い婚の時代です。高貴で裕福な人々の間では、ハギの枝に手紙を結んで男女が逢瀬の約束のやり取りをしていたそうです。ハギは恋文のためのアイテムでした。
毎年毎年、株から新たな芽が伸びて、春から夏にぐんぐん成長するハギの生命力がポジティブな印象を受けることもあり、こんな花言葉になりました。
『内気』の花言葉とは正反対な気もしますが、どちらもハギの素朴なイメージの表れのようにも感じられます。
分類: マメ科ハギ属
学名: Lespedeza レスペデーザ(属名)
和名: 萩(ハギ)
別名: ニワミグサ(庭見草)
ハツミグサ(初見草)
シカナキグサ(鹿鳴草)
シカツマグサ(鹿妻草)
ノモリグサ(野守草)
英名: Bush clover(ハギ属全般)
Japanese bush clover(東アジアのハギ)
開花時期: 7~10月(日本のハギ) 夏~秋の花
花色: 紫、ピンク、白
樹高: 1~2m 落葉低木
花持ち期間: 3~4日
生息地: アムール地方~東アジア、北米東部、オーストラリア
原産地: 東アジア、北米