日本では、つる性植物のことを「カズラ(葛)」と総称しています。同じ字で「クズ(葛)」と読むと、マメ科クズ属の特定品種の名称です。
クズの花は、古の時代から「秋の七草」のひとつとして愛されてきました。根っこから採れるデンプンは「葛粉(クズコ)」として、和菓子などに使われてきました。花も根も、風邪や胃腸病などの生薬とされてきました。
そんな、日本人にはお役立ち植物として重宝されているクズですが、一方で、手入れをしないと、他の植物を駆逐してしまう勢いで繁殖する有害種でもあります。世界では侵略的外来種ワースト100に入れられています。
もくじ
クズの花言葉
クズ全般の花言葉
『活力』
『芯の強さ』
『治癒』
『思慮深い』
『根気』
『努力』
『恋のため息』
クズってどんな花?
プエラリア・モンタナ・ロバタ
日本で「クズ(葛)」と呼ばれているのは、一般的に
学名:Pueraria montana var.lobata プエラリア・モンタナ・ロバタ
という品種です。濃紺紫や赤紫色の花が咲きます。
モンタナは、変種や亜種がたくさんある品種で、もともとは沖縄や台湾などで見られる、和名「タイワンクズ」の学名です。ロバタはその変種で、日本原産種でした。「Pueraria lobate」と表記されている場合もあります。
ロバタの更に亜種で花色の違う以下の2品種も日本に自生しています。
- 白花の「シロバナクズ」(学名:P. lobate. f. leucostachya)
- 薄紅色の花の「トキワイロクズ」(P. lobate. f. alborosea)
花言葉の由来
強い繁殖力
『活力』
『芯の強さ』
『根気』
『努力』
つる性植物の繁殖力は総じて強いものですが、中でもこのクズは、短期間のうち辺り一面を覆い尽くすほどの勢いで繁殖します。
日本では、クズの生命力の強さをポジティブな印象で受け止めていることが、花言葉に表れています。
東アジア原産のクズの仲間(プエラリア属)は、1876年に開催されたフィラデルフィア万博の際、日本から運ばれて庭園の飾りにされたことを機に、「Kudzu」の名で北米に広まりました。あずま屋の飾りなどにされたほか、丈夫で繁殖しやすいことから、土壌流失防止の保護として植樹を政府が奨励しました。
が、あまりに繁殖力が強すぎ、在来種を駆逐して一面を覆ってしまうようになり、20世紀半ば頃には有害植物と指定され、現在まで、駆除が続けられています。それでも、地下茎で増えていくつる植物は、なかなか駆除しきれず、未だ全米で、3万㎢で繁殖していると見られています。
日本では秋の風物詩として愛されるクズの花の風景ですが、欧米人にとっては頭の痛い侵略種です。園芸植物としても一部でしか出回っておらず、花言葉も付いていないようです。
葛根湯をどうぞ
『治癒』
『思慮深い』
海外でもウケやすい古典落語のひとつに「葛根湯医者」という話があります。要約するとこんな話です。
クズの根の生薬には、発汗作用や鎮痛作用、血行をよくする作用などがあります。免疫力低下につながる身体の不調を整えることで病気を治す、という観点の東洋医学では、葛根湯の効能として、以下のようなものをあげています。
- 風邪の初期症状
- 鼻水、鼻づまり
- 肩こり
- 筋肉痛
- 神経痛
- 血行障害
まあ、一般的な身体の不調症状はあらかた入っているので、たいていの病気の初期症状の緩和には葛根湯は効くわけです。落語はそんな東洋医学のアンニュイさと苞活力を揶揄した笑いです。花言葉もそんなところから付きました。
うらみ草
『恋のため息』
クズの葉の裏には、細かい白い毛が生えています。光の反射も葉の表とは異なり、少し鈍い緑色に見えます。風に煽られると、葉の裏のトーンの違う緑色がチラチラと垣間見える様子から
「裏見草(ウラミグサ)」
という別名でも呼ばれていました。
秋の七草は、万葉の時代から多くの和歌に詠みこまれてきました。ウラミグサ(クズ)は、「恨み草」と捉えられ、ままならぬ恋の苦しさや失恋の恨みごとを表現した歌もいくつか見られます。
「真田葛(まくず)延ふ(はう)
夏野(なつの)の繁く
かく恋(こ)ひば
まことわが命(いのち)
常(つね)ならめやも」
-万葉集から詠み人知らずの歌
意味:
ま葛ののびる夏野のように、
しきりにこれほど恋うていたなら、
本当に、私の命は
どうかなってしまうのではないだろうか
この花言葉は、クズが苦しい恋の象徴でもあったことから付きました。
クズ、美しく優雅な佇まいの花ですが、複雑な思いの籠る秋の七草です。
分類: マメ科 クズ属
学名: Pueraria montana var.lobata
プエラリア・モンタナ・ロバタ
和名: 葛(クズ)、真葛(マクズ)
別名: 裏見草(ウラミグサ)
英名: Kudzu
開花時期: 8~9月 秋の花
花色: 濃紺紫、赤、白、淡桃色など
草丈: 10~15m つる性多年草
生息地: 東アジア、東南アジア、ニューギニア
原産地: 日本、中国、朝鮮半島