ストックは、南ヨーロッパ原産の園芸植物です。日本には江戸時代初期にポルトガル経由で伝わったといわれ、和名は、
「紫羅欄花(アラセイトウ)」
といいます。
2~3㎝ほどの一重または八重咲の花が、茎の先端に花穂のように咲きます。色のバリエーションが多く、見た目が華やかです。が、過度に派手すぎず、他の花との調和もしやすいので、ブーケやアレンジメント、生け花などに使われることが多いです。
胡椒のようなスパイシーさも感じる甘い強い香りが特徴的です。花持ちも香りも長く保つので、プレゼントにも重宝されています。
花言葉が愛の強さをイメージするものが多いため、結婚式でも人気の花です。
もくじ
ストックの花言葉
ストック全般の花言葉
『永遠の美』
『愛の絆』
『愛の結合』
『見つめる未来』
『逆境に堅実』
『逆境を克服』
『求愛』
色別の花言葉
赤花の花言葉
『私を信じて』
白花の花言葉
『思いやり』
『ひそやかな愛』
黄花の花言葉
『淋しい恋』
紫花の花言葉
『おおらかな愛情』
ピンクの花言葉
『ふくよかな愛情』
西洋(英語)の花言葉
『lasting beauty(永遠の美)』
『bonds of affection(愛情の絆)』
『contentment(満足)』
『promptness(迅速さ』
ストックってどんな花?
アラセイトウとニオイアラセイトウ
「Stock(ストック)」は英名です。一年草ですが、茎がとても太くて丈夫なので、木の幹を表すストックの名がつきました。
日本人には、葉の質感が毛織物のように見えたので、ポルトガル語のラシャ布「ラセイタ」から「葉ラセイタ」と呼ばれ、それがだんだん「アラセイトウ」に変化しました。
アラセイトウに少し遅れて入ってきた同じアブラナ科の花がありました。茎の先端にトウモロコシのような縦長の花穂が付き、強い香りがあるので、アラセイトウと非常によく似ています。
和名は
「匂紫羅欄花(ニオイアラセイトウ)」
になりました。
ストックとウォールフラワー
アラセイトウ(ストック)は、アブラナ科の
「アラセイトウ属(Matthiola)」
の中の一品種です。
ニオイアラセイトウは、アブラナ科のひとつの属
「エリシウム属(Erysimum)」
の花を総じて呼んでいます。
英語では、ニオイアラセイトウのほうは
「Wallflower(ウォールフラワー)」
と呼んで、ストックとは別物として扱っています。
が、実は、英語圏以外の国では、このふたつの花の区別はあいまいです。
壁の花
ウォールフラワーは、“壁の花”と直訳できます。英語圏以外の言葉でも、ほとんど“壁の花”という意味になる花名が付いています。
生物の科学的な分類体系が整う18世紀以前は、ストックとウォールフラワーは、同じ仲間に見られていたので、英語圏以外では、ストックも壁の花の名で呼ばれていました。
その後分類が分かれても、ストックの正式名称(属の学名)を“壁の花”名にしてしまった言語が多く、一般的には両者の区別はあいまいです。各言語のストックの名称を英訳すると「Stock」ではなく「Wallflower」となるケースがとても多いです。
と、いう状況なので、ふたつの花の花言葉とその由来は、どこの国でもかなり混在して紹介されています。日本も例外ではありません。
花言葉の由来
英語圏の花の意味
英語では、ストックはその独特の花の付き方と豊かな香り、その持ちの良さから、
- 幸福や成功に満ちた、満足のいく豊かな人生
- 時がたっても失われない美
を象徴する、と解説されています。イギリスでも結婚式やプロポーズの定番の花です。
花言葉の
『lasting beauty(永遠の美)』
『contentment(満足)』
は、確かにそんなイメージです。が、
『bonds of affection(愛情の絆)』
『promptness(迅速さ』
は、ウォールフラワーのエピソードにも由来しているように感じます。
ウォールフラワーの物語
エリシウムの花名が“壁の花”となった所以は、
- 中世のお城の城壁の上でよく咲いていたから、という説
- どこの国とも不明な男女の悲恋の物語から、という説
のふたつが欧州では有名です。
悲恋物語というのは、こんなお話です。
“ある国のお姫様が王に恋人との仲を反対されます。姫は、ロープを使って城壁を降り、城を抜けだそうとします。が、ロープが切れて転落死してしまいます。哀れに思った神様が姫をエリシウムの花に変えてあげました。”
エリシウムはそれ以来「駆け落ちの合図の花」といわれ、花言葉は
『Fidelity in adversity(逆境の忠実)』(英)
となっています。
日本で、ストックの花言葉の由来を検索すると、ほぼ100%この逸話が出てきます。そして、花言葉のほとんどが、この話と英語のふたつの花の花言葉に由来しています。
テンプル騎士団
もうひとつ、花言葉の発祥の地フランスでは、ストックもエリシウムも
「Giroflée」(壁の花)
と呼び、花の持つ意味(花言葉)も一緒です。
エリシウムは4枚の花びらが平らに開きます。フランスでは、赤花を赤い十字架に見立て、
「テンプル騎士団」
のイメージに重ねる風潮があります。
赤十字はテンプル騎士団のシンボルであり、フランスはテンプル騎士団発祥の地です。
赤十字の表すテンプル騎士団の精神は、
- promptitude(迅速)
- fidélité(忠誠)
- constance(恒常)
- l’amour (愛)
です。英語の花言葉にはこれも反映していると見られます。
ストックの花言葉の由来をひも解いていくと、花言葉とは、文化や国を超えて伝わる間に、勘違いや混同によってもいろいろ変化していくものだな、ということがよくわかります。
分類: アブラナ科アラセイトウ属
学名: Matthiola incana マッスィオラ・インカナ
和名: 紫羅欄花(アラセイトウ)
英名: Stock
開花時期: 11~5月 冬から春の花
花色: 赤、ピンク、白、紫、黄など
草丈: 20~80cm
花持ち期間: 5~10日
原産地: 地中海沿岸地方