パンジーは、日本語で「三色菫(サンシキスミレ)」と呼ばれることがありますが、サンシキスミレはもともと別の品種です。19世紀の始め、北欧で、従来のサンシキスミレと他のいくつかのスミレを交配させて生まれた育成種が「パンジー」と名付けられました。
パンジーは、園芸種としてあっという間にヨーロッパ全土に伝わりました。交配も進んで、1835年までには400品種が誕生、現在は世界中で1000を超える品種があります。
19世紀誕生なのに、パンジーには様々な神話や伝説があり、それらに基づく花言葉も豊富です。愛の神や天使に由来する話もあり、ヨーロッパでは
- バレンタインデーに贈る花の定番
- 恋心を喚起させる恋愛のお守り
となっています。
もくじ
パンジーの花言葉
パンジー全般の花言葉
『物思い』
『思想』
『私を思って』
『遠慮』
西洋(英語)の花言葉
『memories(思い出)』
『merriment(陽気さ)』
『think of me(私を思って)』
色別の花言葉
紫花の花言葉
日本:
『思慮深い』
『心の平和』
『平穏』
英語:
『You occupy my thoughts(あなたのことで頭がいっぱい)』
黄花の花言葉
日本:
『慎ましい幸せ』
『田園の喜び』
英語:
『remembrance(記憶)』
白花の花言葉
日本:
『温順』
英語:
『thoughts of love(愛の思い)』
アプリコット(あんず色)の花言葉
日本:
『天真爛漫』
英語:
『innocence(天真爛漫)』
ビオラ(小輪多花性種)の花言葉
『誠実』
『信頼』
『忠実』
『少女の恋』
花言葉の由来
思索にふける人の顔
パンジーの語源は、フランス語の「パンセ(pensée:思想)」からきています。
花が小難しい表情の人の顔のように見えることが理由です。
『物思い』
『思想』
『memories(思い出)』
『思慮深い』
『心の平和』
『平穏』
『remembrance(記憶)』
これら、考えたり、思い出したりするイメージの花言葉も、すべてここから生まれました。
聖バレンタインの伝説
バレンタインデーの由来となっている、聖バレンタインの伝説を知っていますか?
ローマ帝国時代、愛し合う恋人たちのため、国に禁止されていた結婚式を密かに行って処刑された、キリスト教の司祭バレンティヌスの話です。
バレンティヌスは、牢獄の窓辺に咲いていたスミレのハート型の葉を
というメッセージを付けて鳩に託した、とされています。
これが、スミレではなくパンジーの伝説として広まっています。
『think of me(私を思って)』
の花言葉や、バンジーがバレンタインデーの花となっていることの所以です。
ギリシャ神話の片思いのシンボル
バンジーが、恋愛のシンボル扱いされるのは、スミレの古代神話も関係しています。
“ギリシャ神話の大神ゼウスが、イオという名のスミレ色の瞳の少女に恋をします。ゼウスはイオを牛の姿に変えて、妻ヘラから隠していました。が、ヘラは見抜いてイオを星に変えてしまいます。イオに会えなくなったゼウスは、スミレの花を見ては、痛む心を慰めていました。”
『You occupy my thoughts(あなたのことで頭がいっぱい)』
『thoughts of love(愛の思い)』
『誠実』
『信頼』
『忠実』
『少女の恋』
これらは、ゼウスとイオの思慕や敬愛の情を表す言葉といわれます。
サンシキスミレ誕生の伝説
パンジーが恋の花として有名になった後から作られたのか、従来のサンシキスミレの話なのか不明ですが、サンシキスミレ誕生の神話も2種類あります。
ギリシャ神話の愛の神「エロス」(ヴィーナスの子供。背中に羽があり、弓矢をもっている男性の神様)の話。
“ある時、エロスが野原を歩いている時、純白のスミレの花の美しさに心打たれます。
「私の面影をお前たちに移してあげるから、人々に、真の愛の心を伝えておくれ」
といって、花にキスを3回すると、スミレは3色に分かれ、パンジーになりました。”
ローマ神話では、エロスは子供(天使)の姿の「キューピット」とされています。
“キューピットが放った矢が、誤って純白のスミレの花に当たりました。その時受けた傷から、3つの色が生まれ、サンシキスミレになりました。”
『陽気さ』
『天真爛漫』
の花言葉は、キューピット(天使)のイメージから生じたものです。
ドイツの伝説
ドイツでは、パンジーの香についての伝説があります。
“昔、パンジーにはスミレのような甘い香があり、香に誘われて花摘みに来る人が大勢いました。周囲の野菜畑も踏み荒らされたので、バンジーは
「私の香りをなくしてください」
と神に祈ります。願いは叶い、この時からパンジーには香がなくなりました。”
『遠慮』
の花言葉はこのエピソードからきています。
ビオラとパンジーとバイオレット
なぜ、スミレの逸話がパンジーの話になっているのでしょうか?
いつの頃からか、小さな花のパンジーを「ビオラ」と呼んで分けるようになりました。ビオラはスミレ属を表す学名「Viola」からきています。
学名はラテン語(ローマ帝国の言語)なので、スミレの花の古代神話は“ビオラの神話”として伝わっています。
そして、ギリシャ神話にもローマ神話にも、別に“スミレ(バイオレット)の神話”もあります。
これらのことから、ビオラの話が“パンジーの話”となったとも考えられます。
ネットの花言葉の記事でも、その辺だいぶ混乱している感じがします。
まあ、花言葉という概念自体、19世紀以降に流行したもので、歴史も神話も噂もごっちゃにして、所詮、人が考えました。あんまり細かいこと気にしちゃいけないのかもしれません。
分類: スミレ科スミレ属
学名: Viola x wittrockiana ビオラ・ウィットロッカナ
和名: 三色菫(サンシキスミレ)
別名: 遊蝶花(ユウチョウカ)、人面草(ジンメンソウ)
英名: Pansy,Garden pansy
開花時期: 12~5月 冬~春の花
花色: 紫、黄、白、青、ピンク、赤、オレンジ、茶、黒、複色など
草丈: 10~30cm
花持ち期間: 3~7日
原産地: 北ヨーロッパ