夏の花の花言葉

ハスの花言葉/清らかな仏様のシンボルなのに、縁起が悪い花?

Written by すずき大和

仏教徒にとって、ハスはお釈迦様や仏様、極楽浄土などのシンボルであることはよく知られています。お釈迦様が歩いた後に咲いた花という逸話も残っており、仏の智慧や慈悲を表す花というイメージが定着しています。

泥の中で育ち、美しい花を咲かせるハスは、国や宗教を超えて

“神聖なイメージ”

を連想させるようです。

ヒンドゥー教でも神話や聖典などでハスは様々なシンボルとして扱われています。

エジプトでは、オシリス神にささげる花がハス(スイレン)でした。

中国では、俗人に染まらない“君子の花”とされています。

日本では、仏教が特殊な形に変化して発展していますが、ハスの花言葉にはそんな世界のイメージが反映したものがたくさん並んでいます。



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もくじ

ハスの花言葉

ハス全般の花言葉

『清らかな心』
『神聖』
『沈着』
『休養』
『離れゆく愛』
『雄弁』

中国の花言葉

『清純的心(清らかな心)』
『君子』

西洋の花言葉

『eloquence(雄弁)』(英)
『estranged love(離れゆく愛)』(英)
『éloquence(雄弁)』(仏)
『amour aliéné (疎遠な愛)』(仏)
『perfection et pureté(完璧さと純度)』(仏)
『vreemde liefde(他人行儀な愛)』(蘭)

花言葉の由来

清らかに咲く神聖な心

清らかなイメージや宗教の神聖なシンボルに影響されて生まれた花言葉は、西洋から中国にまで見られます。日本の花言葉の多くもそれに準じています。

『清らかな心』
『神聖』
『沈着』

『清純的心(清らかな心)』(中)
『君子』(中)

『perfection et pureté(完璧さと純度)』(仏)

『君子』というのは、徳のある人、品位の高い人など、立派な人格者のことです。俗世の矮小な野心や見栄にとらわれないところが、清らかなハスの花のイメージに重なるのでしょう。

『沈着』は、君子は冷静沈着に行動するから、というところからきています。

オシリスはおしゃべりな神

『雄弁』

これは西洋の花言葉からきています。西洋では仏教より古代の地中海世界の宗教のほうが強く影響していますが、この花言葉は、エジプトのオシリス神が雄弁だったため、と伝えられることにちなみます。

オシリスはエジプトの国王でした。平和的に国を治めていた名君でしたが、弟に暗殺され王座を奪われます。死後は冥界を統治する神になり、当時のエジプト人の死生観の中で、とても存在の大きな神様として慕われていました。

散りゆく花びらが象徴するもの

『離れゆく愛』
『estranged love(離れゆく愛)』(英)
『amour aliéné (疎遠な愛)』(仏)
『Vreemde liefde(他人行儀な愛)』(蘭)

西洋に多いこれらの花言葉は、ひとつのハスの花の咲いている期間がとても短いことに由来しています。ハスの花は、だいたい開花して4日目には散ってしまいます。

散る時、花びらが一枚一枚剥がれるように落ちていくので、それが、だんだんと気持ちが離れていく恋人たちの心に例えられています。

規則正しい毎日のリズム

『休養』

ハスの花は、早朝に開き、午後になると少しずつ閉じていきます。開花の期間、ずっと毎日規則正しく休憩時間をとっているようなので、この花言葉が付きました。

神聖なのに縁起が悪い花

日本の仏教は弔い専用宗教?

日本に仏教が伝わったのは飛鳥から奈良時代です。権力者が、布教を政治と結びつけて半ば強制的に広めました。

日本にも土着の信仰があり、多くの神様がいて、それぞれの地に神を祀る様々な風習も根付いていました。日本人の宗教観は古代からとても大らかで、多くの外来の神が入ってきても、それをうまく取り込んで、日本の神様と同化したり習合したりしながら、独自の信仰を作ってきました。

仏教も、神教(神道)や土着の風習などと結びつき、新たな解釈で教えを説く人も出てきて、他の国にない日本独自の形になっていきました。

釈迦が説いた仏教は、人が悟りを開くために修行を積み重ねていく行いでした。悟りを開くところまで到達した人を「仏(ほとけ)」と呼びました。

日本では、念仏を唱えることで、誰でも死後極楽浄土に行ける、という教えが広まりました。そのうち、

“どんな人も、死んだら全部、仏になる”

ことになりました。

こうして、日本では死んだ人を「仏様」と呼んでいます。

現代人のほとんどは、生きている間は、どちらかというと神様信仰が日常生活の中では幅を利かせています。が、死んだとたんに、宗教儀式はほとんどが仏教式になります。

お寺の檀家でもない限り、日本人にとって仏教は、もっぱら

“葬儀や法事など、弔い専用の宗教”

となっています。一般に「仏事」というと、宗教のことではなく弔事のことを意味します。

仏事の象徴は死の象徴?

そのため、葬儀や法事以外の場で仏教を持ち出すと、それは「死んだ人に関係づける」ことと受け止められがちです。当然、縁起はよくありません。

ハスの花は仏教の象徴ですから、ハスの花の柄の着物は仏事専用とされ、結婚式に着ていくと大ヒンシュクを買います。御祝い事の花束にもハスは避けられます。

他の仏教国では、もちろんハスは神聖な花として、宗教的なイベントだけでなく、お祝い事の際に進んで飾られ、ギフトにもされています。結婚式でも定番です。

日本は仏教国だと思っている日本人はたくさんいると思いますが、なぜ信仰する宗教のシンボルが縁起悪いものとして忌避されるのでしょうか?

とっても不思議な日本の宗教観に翻弄されているハスの花なのです。

ハスの基本データ

分類: ハス科ハス属
学名: Nelumbo nucifera ネルンボ・ヌシフェラ
和名: 蓮(ハス)
別名: 水芙蓉(スイフヨウ)、蓮華(れんげ)
英名: Lotus
開花時期: 7~9月 夏の花
花色: 白、ピンクなど
草丈: 50~100cm 落葉多年草
原産地: 熱帯~温帯のアジア、オーストラリア、北アメリカなど


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筆者情報

すずき大和

花に心があったら、自分の花言葉についてどう思うだろう?と、変なことが気になる変わった子供が、成長してライターやってます。花言葉の由来をヒモ解いていくと、花より人の心が見えてきます。花言葉を添えて花を贈るなんて、日本人にはハードル高い行為ですが、まあとりあえず、のんびりウンチクを楽しんでもらえれば幸いです。