ルクリアは、インドのアッサム地方からネパール、中国に続くエリアで見られる常緑の低木です。11月から1月にかけて殺風景になる冬の季節に、常緑の濃い艶のある緑の葉と、たくさんの小さな花がアジサイのようにピンクの半球状に咲き誇る姿は、思う以上に華やいで見えます。
南アジアのエキゾチックな花というイメージで、ヨーロッパのマニアなガーデナーに好まれているものの、西洋ではそんなにポピュラーではありません。
一方、日本では、
- 5弁の花びらの小さな花が桜に似ているせいか、
- とても優しい上品な芳香のせいか、
- ふっくらまん丸の玉のような蕾が可愛らしいせいか、
「アッサムニオイザクラ」
「ニオイザクラ」
の名で、比較的好まれている花です。
花言葉にも、木枯らし吹く季節に心和ませてくれる美しい花木の魅力が表現されています。
もくじ
ルクリアの花言葉
ルクリア全般の花言葉
『優美な人』
『しとやか』
『匂い立つ魅力』
『清純な心』
ルクリアってどんな花?
とても手がかかる淑女
ルクリアが日本に入ってきたのは意外と最近の1970年代です。
富士吉田の農家が取り入れて栽培しました。時季的にも貴重な美しいビジュアルと芳香はとても日本人好みで評判になりましたが、栽培がとても難しい花でした。
冬場に咲く花は、短日性(たんじつせい)といって、日照時間が一定以下にならないと花芽がつきません。乾燥にはある程度耐えますが、暑さや湿気に弱く、かといって南アジア育ちなので霜が降りるような寒さも耐えられません。
夏は直射日光が当たりすぎず、風通しよくムシムシしない環境を作ってあげないといけません。冬は、夜は暗くして、根腐れさせず、乾燥もさせすぎないような適度な水やりと霜防止が欠かせません。
香の強い花が好まれる西洋でも、そんなにポピュラーになっていないのは、メンテナンスの難しさも一因かもしれません。
そんな手間がかかるデリケートなレディのような花なので、当初は富士山の北山麓エリアでしか生産化に成功しませんでした。今も、ルクリアは富士山北麓地方の特産品となっています。
香と色の多様化
中心となっている栽培種は
「ルクリア・ピンセアナ(Luculia pinceana)」
「ルクリア・グラティッシマ(L. gratissima)」
の2種で、そこから交配していくつかの新種も開発されています。
野生種はほとんどが薄いピンク色で、ジャスミンのような強い香り、でもジャスミンよりソフトでまろやかな優しい甘さの芳香を放っています。園芸種の新種の中には、濃いピンクや赤い花のものもあり、香も品種よって少しずつ異なっています。
環境管理の面倒さもあり、地植えよりプランターやコンテナ栽培が一般的です。冬から早春にかけての背丈の低い花鉢の品種(プリムラ、パンジーなど)に比べて希少で、流通も少ないですが、クリスマス頃に香の強い常緑の花は、やはり珍しく興味を惹かれる品種です。
意外と長持ちの花
ルクリアの花は“高坏(たかつき)形”といわれる面白い形をしています。オシロイバナやユリのようなラッパ形ですが、筒状の部分がとても細く、先の割れている部分は5弁に平らに開いています。蕾の時は玉のように膨らんでいて、細い筒部分を棒にした、手持ちのペロペロキャンディのように見えます。
ひとつの花径の先端には、20~30の蕾が付き、ひとつひとつの花は平均2~3週間、長いものは一か月近く咲いています。デリケートな割に、花持ちはとても長いのです。サザンカのように毎日たくさん散る花びらのお掃除にも翻弄されないので、その点はちょっと楽ですね。
花言葉の由来
美しく魅力的なビジュアル
『優美な人』
『しとやか』
緑の葉もピンクの花びらも、しっとりとした質感があり、艶っぽい美しさが洗練された大人の女性を思わせます。
『清純な心』
かといって、妖艶な怪しい魅力というより、爽やかな印象なので、こんな花言葉もついています。
記憶に残る甘い芳香
『匂い立つ魅力』
日本の三大香木と呼ばれる花木があります。
「沈丁花(ジンチョウゲ)」(春)
「くちなし」(夏)
「キンモクセイ」(秋)
それぞれ一度嗅いだら忘れられないほど記憶に残る、特徴ある香を放って、それぞれの季節の到来を私たちに知らせてくれます。
「ニオイザクラ」は、冬を知らせる芳香といえるでしょう。
三大香木ほど全国に普及していませんが、一度ハマると癖になるかのように、育てている人は、手間がかかってもずっと大事にしているといいます。
分類: アカネ科ルクリア属
学名: Luculia ルクリア(属名)
和名: 匂い桜、アッサム匂い桜
英名: Luculia
開花時期: 11~1月 冬の花
花色: ピンク、赤
草丈: 50cm~1m 常緑低木
花持ち期間: 10~30日
原産地: インドアッサム地方、中国ヒマラヤ地域