日本では、30年くらい前まで、「園芸」は盆栽と並んで“高齢者の趣味”扱いでした。
90年代初め頃、イギリス式ガーデニングが大ブームになりました。園芸から「ガーデニング」に名前が変わった途端、オシャレでかっこいいイメージに一変し、若い人もこぞってガーデナーになりました。
外来種も急激に増え、品種改良も進み、店頭の花の種類も爆発的に増えていきました。新たな花と入れ替わりに、それまで一般的だったのに流通量が減っていった花もありました。
グラジオラスは、高度経済成長の頃、店頭でよく見かけた花です。今でも年配者の多くは、花を見て花名がいえます。が、最近は前ほど人気がなく、知名度があまり高くない花になりました。
現在、西洋や日本で流通している品種は、18世紀以降ヨーロッパで改良したアフリカ産の栽培種です。が、古代から中世にかけては、南ヨーロッパ原産のグラジオラスが地中海世界にはたくさん出回っており、西洋では身近な花としての歴史は古いです。
長い年月の中で、時には戦争や死の象徴に、時には愛のメッセージに、と、多くの意味が込められてきました。花言葉も、様々なニュアンスをもった言葉が並んでいます。
もくじ
グラジオラスの花言葉
グラジオラス全般の花言葉
『密会』
『用心』
『思い出』
『勝利』
西洋の花言葉
『strength of character(人格の強さ)』(英)
『sincerity(誠実)』(英)
『preparedness(準備)』(英)
『remembrance(記憶)』(英)
『fuerza de caráctrer(人格の強さ)』(西)
『sinceridad(誠実)』(西)
『de genio vivo(生き生きとした天才)』(西)
『caratteri forti(強い人格)』(伊)
『dorzettingsvermogen en karakter(忍耐強い人格)』(蘭)
『Tu me perces le cœur(あなたは私の心を突き刺す)』(仏)
花色別の花言葉
赤花の花言葉
『堅固』
『用心深い』
『exprime avec érotisme la force de l’amour(エロティシズムと愛の表現)』(仏)
『expresa la parte erótica del amor(エロティックな愛の表現)(西)』
ピンクの花の花言葉
『たゆまぬ努力』
『ひたむきな愛』
『満足』
『réussite et rendez-vous(成功と予定)』(仏)
『el éxito y las citas(成功とデート)』(西)
紫花の花言葉
『情熱的な恋』
黄花の花言葉
『invitation amoureuse(愛の招待状)』(仏)
『invitación amorosa(愛の招待状)』(西)
オレンジの花の花言葉
『amour fort et sensuel(強く官能的な愛)』(仏)
『amor fuerte y sensual(強く官能的な愛)』(西)
花言葉の由来
ローマの戦士の剣
グラジオラスの属名
「Gladiolus」
は、ラテン語の“剣”を表す「gladiusグラディウス」が語源です。
細長い葉の形が、ローマ時代の戦士が使った剣の形に似ているところに由来します。
剣は戦いの象徴です。古代社会では、グラジオラスの花は
勝利
武力(強さ)
名誉の死
のシンボルでした。どの国の花言葉も、それらのイメージから生まれたものが主流です。
『strength of character(人格の強さ)』(英)
『sincerity(誠実)』(英)
『fuerza de caráctrer(人格の強さ)』(西)
『sinceridad(誠実)』(西)
『de genio vivo(生き生きとした天才)』(西)
『dorzettingsvermogen en karakter(忍耐強い人格)』(蘭)
『caratteri forti(強い人格)』(伊)
これらは、百戦錬磨の強い戦士たちの、精神力の強さや気高さを表した言葉です。
『preparedness(準備)』(英)
これは、剣は揃っている、戦の準備はいつでも万端整っている、ということです。
『remembrance(記憶)』(英)
は、古(いにしえ)からあまた伝えられてきた戦闘の歴史、記録です。
日本の花言葉
『勝利』
『用心』
『思い出』
『堅固』
『用心深い』
は、西洋の花言葉の意訳からきていると思われます。
狂気に触れる強い愛
『Tu me perces le cœur(あなたは私の心を突き刺す)』(仏)
という花言葉は、剣のイメージを激しい愛の情熱に見立てています。
南ヨーロッパでは、グラジオラスは愛を求める心の象徴でもありました。
『exprime avec érotisme la force de l’amour(エロティシズムと愛の表現)』(仏)
『expresa la parte erótica del amor(エロティックな愛の表現)(西)』
『amour fort et sensuel(強く官能的な愛)』(仏)
『amor fuerte y sensual(強く官能的な愛)』(西)
ちなみに、多彩な色の花束なら
“狂気に触れる激しい愛”
を意味する、という情報もあります。激しいですねぇ。
日本の紫の花の花言葉も
『情熱的な恋』
これに準じています。
逢瀬の誘い
フランスやスペインでは、昔は恋人に贈る花束の中心にグラジオラスを入れ、逢瀬を望むメッセージを送りあったという話が残っています。花の本数がデートの時間を伝えたとか。
『invitation amoureuse(愛の招待状)』(仏)
『Invitación amorosa(愛の招待状)』(西)
黄色の花言葉はデートのお誘いそのままです。
『réussite et rendez-vous(成功と予定)』(仏)
『el éxito y las citas(成功とデート)』(西)
ピンクの花言葉は、密会の成功を祈願するものだったのでしょうか。
フランス語の“rendez-vous(予定)”は、逢瀬の予定ということです。
『密会』
『たゆまぬ努力』
『ひたむきな愛』
『満足』
これら日本の花言葉は、西洋の習慣にちなんでいるようです。
ところで、日本の花言葉情報の中に、これらの逢瀬の誘いは、「南ヨーロッパの古代の風習」だと解説するものが多いようです。が、フランス語やスペイン語の資料には、「古代」という表記が見つかりませんでした。
古代地中海世界は愛に大らかな文化でしたから、恋人同士が密かに合図を送らないとデートもできない男女交際に厳格な時代は、キリスト教が社会を律していた中世のような気もします。
分類: アヤメ科グラジオラス属
学名: Gladiolus グラジオラス(属名)
和名: 唐菖蒲(トウショウブ)
別名: 阿蘭陀菖蒲(オランダショウブ)
英名: Gladiolus,Sword lily
開花時期: 5~10月 夏の花
花色: 赤、ピンク、紫、白、黄、オレンジ、青、緑など
草丈: 60~120cm 球根性多年草
花持ち期間: 3~10日
原産地: 中央ヨーロッパ、地中海沿岸、南アフリカ