春の花の花言葉

ヤマブキの花言葉/山吹色は黄金色、洗練された小判色

Written by すずき大和

「ヤマブキ」と聞くと、子供の頃使っていた絵の具やクレヨンの「やまぶきいろ」を思い出す人、少なくないのではないでしょうか。12色入りだと、明るく白っぽい「レモンいろ」と、だいだい色に近い濃い「やまぶきいろ」、黄色は2色入っていました。

やまぶきいろは、ヤマブキ(山吹)の花の色です。

日本原産のヤマブキは、大変古い園芸植物のひとつです。柔らかく細い枝先に、ギザギザの葉っぱと黄色い花がたくさんついて風に揺れる様子から、「山振り」と呼ばれ、後に「山吹」になった、というのが花名の由来の一説です。人の背くらいまでの低くふんわりと枝を広げる株立ちなので、多年草のようですが、極細の低木です。

昔から、日本の春は「梅に始まり、山吹で終わる」といわれています。桜が満開の頃に咲き出し、ゴールデンウイークの頃に満開となります。ヤマブキの花が終わると、初夏の季節の到来を実感します。



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もくじ

ヤマブキの花言葉

ヤマブキ全般の花言葉

『気品』
『崇高』
『金運』

西洋の花言葉

『elegance(優雅さ)』(英)
『sublimity(気高さ)』(英)

花言葉の由来

金貨の花

江戸時代、「やまぶきいろ」というと小判のことでした。緑の葉っぱの中に散りばめられた花は、黄金色、つまり金貨に例えられたのです。

“谷底に落とした金貨がヤマブキの花になった”

といういい伝えもあります。

花言葉の由来はだいたいそこにあります。

『金運』

は、そのまんまですね。

小判のイメージ

『気品』
『崇高』
『elegance(優雅さ)』(英)
『sublimity(気高さ)』(英)

は、お金のイメージとはちょっと違うと感じますか?

お金というと、もっと俗物っぽいというか、煩悩的というか、欲丸出しのシロモノですから。日本では、お金を渡すときには裸で出さずに封筒に入れるのが大人のマナー、なくらいです。枝いっぱいの小判のどこがエレガンスなんでしょう?

やまぶきいろの小判は、江戸時代は一般的に一両小判のことでした。一両を今のお金に換算するのは、物価の相場が物凄く違うので難しいのですが、例えば

  • お蕎麦(お江戸のファストフードの代表)は375杯食べられました
  • 銭湯には750回入れました
  • 髪結い(美容院)には214回行けました。
  • 旅籠(はたご:今のシティホテル)には1か月泊まれました

諸々平均すると、だいたい非正規雇用の人の毎月の手取り給料くらいですね。

貧富の格差が大きかった中世では、庶民のほとんどが最低賃金層ですから、一般庶民の生活の中で、給料1か月分のお札なんて、まず使えません。

「お客さん、お釣りなんてありやせん。勘弁してください」

という金額です。小判はもっぱら商人(あきんど)の取引や行政予算の支払いに使うお金です。

大店(おおだな)の奉公人以外の俗世間の庶民にとって、小判は手の届かないはるか上の世界のものでした。一生触ることがない人もいっぱいいました。お金という実感より、セレブの象徴という感じでしょうか。

また、花言葉文化が日本に入ってきたのは近代ですが、既にもう小判はお金ではなく、洗練された古美術品(アート作品)として扱われる時代になっていました。

そんなセレブでアーティスティック、ハイソなイメージから出てきた言葉だとすると、なんとなく理解できます。まあ、花のビジュアルのイメージもあると思われます。

ちなみに、西洋にはなかった花なので、英語の花言葉は日本から伝わったものです。

ヤマブキってどんな花?

実のない八重ヤマブキ

ヤマブキにまつわる逸話というと、太田道灌(オオタドウカン)の話が有名です。落語や講談などでもよく出てきたので、昭和の子供世代の人ならだいたい聞いたことがあるようです。

太田道灌は室町時代の武将です。ある時突然にわか雨に合い、農家に蓑(みの:当時の雨具・レインコート)を貸してほしいと頼みます。が、娘がひとり、ヤマブキを一枝渡してきました。そんなもの何の役にもたつか!と、道灌は怒って農家を出ますが、教養のある家臣から、それは、昔の和歌集に載っている歌にかけて、貧しくて蓑がないことを奥ゆかしく伝えたのだ、と教えられます。

その歌がこれ

「七重八重 花は咲けども 山吹の実の一つだに なきぞ悲しき」

ヤマブキの原種は一重咲きです。この時代には既に八重咲きの園芸種が生まれていて、野生化もしていました。しかし、この亜種の八重ヤマブキは、めしべが変形して花びらに変わり八重咲きとなり、おしべは退化したため、受粉せず、実が成らないのです。

ヤマブキ(学名:Kerria japonica)

一重山吹


八重ヤマブキ(学名:Kerria japonica ‘Pleniflora’)

八重山吹


農家の娘さんは、「実のない」ヤマブキで「蓑がない」ことを詫びたのです。道灌は無学な身を恥じて、これ以後和歌を学び、後に歌人として名を馳せる武人になりました。

戦国の世で暗殺という最後を遂げる道灌は、歴史好きの人にも好かれるドラマチックな人生を歩んだ人です。ヤマブキ逸話は、そんな彼の波乱万丈な生き様を彩る風流なお話です。

ヤマブキの基本データ

分類: バラ科ヤマブキ属
学名: Kerria japonica ケリア・ジャポニカ
和名: 山吹(ヤマブキ)
別名: 面影草(オモカゲグサ)、鏡草(カガミグサ)
英名: Japanese rose,Kerria
開花時期: 4~5月 春の花
花色: 黄(山吹色)
樹高: 1~2m 落葉低木
花持ち期間: 7日前後
原産地: 日本、朝鮮半島、中国


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筆者情報

すずき大和

花に心があったら、自分の花言葉についてどう思うだろう?と、変なことが気になる変わった子供が、成長してライターやってます。花言葉の由来をヒモ解いていくと、花より人の心が見えてきます。花言葉を添えて花を贈るなんて、日本人にはハードル高い行為ですが、まあとりあえず、のんびりウンチクを楽しんでもらえれば幸いです。