春の花の花言葉

ハナズオウの花言葉/不吉な伝説があっても、春の喜びの象徴

Written by すずき大和

「ハナズオウ」とカナで書くと、RPGに出てくるモンスターの名前みたいな響きですが、江戸時代初めごろから日本各地で庭木として親しまれてきた、春の花の名前です。

桜や桃が終わる頃から若葉が芽吹き始める時季に、茶色の枝から直接花茎が出て、マメ科特有の蝶のような形の花を咲かせます。箒(ほうき)のように枝分かれした2~3mの低木なので、玄関先などのちょっとしたスペースにもよく植えられています。

春たけなわの頃、葉が出る前に、枝いっぱいに紫がかったピンクの花をたわわに咲かせる花姿は、実に日本人好みの花木です。が、同じハナズオウ属でも、西洋で見られる品種は、ネガティブな伝説と花言葉をもつ木として有名です。

日本のハナズオウには、日本人のポジティブな印象から生まれた花言葉と、セイヨウハナズオウのネガティブ花言葉からとった言葉、両方がついています。



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もくじ

ハナズオウの花言葉

ハナズオウ全般の花言葉

『裏切り』
『不信仰』
『疑惑』
『人のおだてに乗りやすい』
『裏切りのもたらす死』
『エゴイズム』
『高貴』
『喜び』
『目覚め』
『豊かな生涯』

西洋のハナズオウ属の花言葉

『betrayal(裏切り)』(英)
『unbelief(不信仰)』(英)
『tradimento(反逆)』(伊)
『verraad(裏切り)』(蘭)

ハナズオウってどんな花?

花名の由来

ハナズオウは漢字で書くと「花蘇芳」です。

「蘇芳(スオウ)」というのは、マメ科の別の花木の名前です。こちらは染料の原材料として栽培されていました。心材や豆のさやから赤色の染料が取れます。

ハナズオウの赤紫の花色が、染料液の色に似ていたため、花蘇芳という名がついた、といわれています。

が、実際の蘇芳色(すおういろ)は、えんじ色に近い赤色です。紫味の強いハナズオウの花色とはちょっと違います。昔の人は醤油の色も「むらさき」と呼んだり、植物の緑色を「あお」と呼んだりしていましたから、代表的な色の概念の守備範囲が今より広かったのかもしれません。

ハナズオウ花


東洋と西洋のハナズオウ属

日本で見られるハナズオウは、中国原産種で、

学名「Cercis chinensis サーシス・チャイネンシス」

と呼ばれる品種です。日本や朝鮮半島、中国東部など、東アジアに生息しています。

ハナズオウ属の仲間は北半球に広く見られ、ヨーロッパでは、

  • 地中海地方原産の「セイヨウハナズオウ」(Cercis siliquastrum)
  • 北米原産の「アメリカハナズオウ」(Cercis canadensis)

などの品種が一般的です。

これらは、10m前後の高木になります。アジアのハナズオウも、野生種は放っておくと15mくらいまで伸びることもありますが、街中に植栽されるものは、低木がほとんどです。

アメリカハナズオウ

アメリカハナズオウ


花言葉の由来

穏やかな春の喜び

早春の梅に始まり、寒桜、桃、桜、八重桜、花街道・・・と次々咲く、春を告げるピンクの花が満開になる花木の最後がハナズオウです。

暖かく、多くの命が芽吹く春爛漫の風景の中で咲くハナズオウは、すっかり目覚め切った自然の、明るく健康的な喜びを象徴しています。

『喜び』
『目覚め』
『豊かな生涯』

という花言葉は、そんな情景から生まれた言葉です。

また、花が終わると出てくる葉が、ハートの形をしていることも、人の「生」を象徴するようで“生涯”という言葉になった、と解説する人もいます。

ハナズオウ葉


ユダの木が示唆するもの

キリスト教徒の多い西洋では、ハナズオウ属(Cercis)は「ユダの木」と呼ばれています。

「Judas tree」(英)
「Albero di Giuda」(伊)
「Arbre de Judée」(仏)
「Judasboom」(蘭)

のほうが、「Cercis」よりも一般的です。

聖書によれば、イエスの弟子のひとりユダは、お金に目がくらんでイエスを裏切り、役人にイエスを突き出す手引きをします。が、イエスが処刑されることを知って己の罪を後悔し、セイヨウハナズオウの木の下で自殺しました。

白花だったハナズオウは、裏切り者の死に場所にされたことを恥じて赤紫色になってしまった、と、伝える伝説もあります。

『betrayal(裏切り)』(英)
『unbelief(不信仰)』(英)
『tradimento(反逆)』(伊)
『verraad(裏切り)』(蘭)

ユダの木の名称とこれらの花言葉は、この話に由来します。

『裏切り』
『不信仰』
『疑惑』
『人のおだてに乗りやすい』
『裏切りのもたらす死』
『エゴイズム』

この日本の花言葉も、同じくユダのことを表しています。

不吉な花言葉の例として、ハナズオウを列挙する記事もよく見かけますが、それ、日本のハナズオウのことじゃないですし、キリスト教徒でなければ、あまり気にしなくてもいいでしょう。

東洋では、中国でも日本でも、春の喜びを表す花として、どちらかというと縁起のいいイメージで昔から愛されてきました。西洋でも、花言葉は花言葉として、美しい花が好まれ、観賞用にあちこち植樹されています。

花言葉は、占いみたいなものですから、いいところ取りで解釈して楽しんで良いと思いますよ。

ハナズオウの基本データ

分類: マメ科ハナズオウ属
学名: Cercis chinensis サーシス・チャイネンシス
和名: 花蘇芳(ハナズオウ)
別名: 蘇芳花(スオウバナ)
英名: Chinese redbud
    Judas tree(セイヨウハナズオウ)
開花時期: 4~5月 春の花
花色: 赤紫、赤、紫、ピンク、白
草丈: 2~3m 落葉低木 ※野生種は10m以上
生息地: 中国、朝鮮半島、日本など東アジア
原産地: 中国北東部


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筆者情報

すずき大和

花に心があったら、自分の花言葉についてどう思うだろう?と、変なことが気になる変わった子供が、成長してライターやってます。花言葉の由来をヒモ解いていくと、花より人の心が見えてきます。花言葉を添えて花を贈るなんて、日本人にはハードル高い行為ですが、まあとりあえず、のんびりウンチクを楽しんでもらえれば幸いです。