いつも怒っている花だから怒り草・・・っていうのは、冗談。
花の形が船の碇(いかり)に似ているので
「碇草・錨草」
の名が付きました。
花の後側に「距(きょ)」と呼ばれる角のような器官が4本伸びており、花が下向きに咲くので、ちょうど碇が吊るされているように見えます。
イカリソウ属は目木(メギ)科に属する植物で、東アジアからヨーロッパにかけて広く自生しています。日本にもイカリソウを始め、花色や形の違ういくつかの原産種や、中国から渡来して帰化した品種など7、8種類程が、北海道から九州までの山麓や森林、市街地の道路端などで見られます。
碇は船が流されないようしっかりと固定するものですから、恋人を拘束したい気持ちを表す、ちょっと熱烈な花言葉が付けられています。
・・・というのは、表向きの一般解説。
実は、裏の“大人向け解説”では、その激しい情熱的な表現の由来は、イカリソウ属の植物のもうひとつの特徴が大きく関係していることを示唆しています。
もくじ
イカリソウの花言葉
『君を離さない』
『あなたを捕まえる』
『新たな人生』
『人生の出発』
『旅立ち』
イカリソウってどんな花?
碇の形が顕著なのは日本の原種
イカリソウ属は、ユーラシア大陸の温帯エリアに広く自生しており、原種も広い範囲で60種ほど見られます。日本の代表的原種イカリソウはその中のひとつで、近代スウェーデンの植物学者によって、ヨーロッパにも紹介され、
「Large flowered barrenwort」
という英名もついています。
が、欧米では、イカリソウも含め、イカリソウ属全般はみんな属名で
「Epimedium(エピメディウム)」
と呼んでいる場合が多いです。
属名の日本語はイカリソウ属ですが、ヨーロッパや中国の原種の中には、距が長く伸びていない形のものも多く、必ずしも碇に似ているわけではありません。
距って何?
距(きょ)は、花びらまたはガクが筒状に変化して、花の後側に突き出たものです。多くの場合、中に蜜腺があり、虫が奥まで潜り込むことによって受粉がうまく行われるしくみになっています。蘭やスミレにも袋の形の距が見られますが、オダマキやイカリソウの距はツンツンしたつの型をしています。
日本人が一般にイカリソウと呼んでいるのは、
- 薄紫色の花が付く「イカリソウ」
- 白花の「ヒメイカリソウ」「トキワイカリソウ」
- 黄花の「キバナイカリソウ」
の4種が多いです。画像検索でヒットするのもだいたいこれ。みな碇の形の距があり、どれも日本原産種です。ちなみに、タイトルバックの写真はヒメイカリソウです。
花言葉の由来
『新たな人生』『人生の出発』『旅立ち』
これは碇をあげる時、つまり出航のイメージから生まれた花言葉です。
『君を離さない』『あなたを捕まえる』
これは冒頭でも紹介したように、停泊するためにおろす碇のイメージからきているといわれています。が、ストーカーと紙一重のような
“執着心”
“独占欲”
ともとれる言葉がちょっと怖い気もします。
同じロマンチックな表現でも、もう少し優しく
『あなたと一緒にいたい』
でもよさそうなのに、なぜこんな欲情的な表現が選ばれたのでしょう。
・・・・それは、イカリソウ属の植物の複数に見られる成分
「イカリイン(Icariin)」
の効能が、まさに男性にとっての
「媚薬」
の効果が高かったためと思われます。
イカリソウは漢方薬のバイアグラ!?
食べれば羊も絶倫に!
中国原産の「ホザキノイカリソウ(穂咲きの碇草)」は、滋養強壮のための生薬として使われてきました。漢方では「淫羊霍(いんようかく)」と呼ばれています。
“この草を食べた羊は、精力が絶倫になった!”
という伝説があるので、そういう名前になったのだとか・・・。今でも、○ンケルなどの強力な精力剤の多くに、淫羊霍の成分が入っています。
ホザキノイカリソウは江戸時代に薬草として日本に渡来し、そのまま帰化して本州などで自生しています。花に距はありませんが、イカリソウ属の仲間です。
本来の淫羊霍はこのホザキノイカリソウのことなのですが、日本原産のイカリソウも同じ成分を持っていたため、代用品として使われてきた歴史があります。
イカリソウをあえて「和淫羊霍」と呼んで区別する例もありましたが、園芸植物のガイドなどを見ると、イカリソウの別名を「淫羊霍」と紹介する記載も少なくありません。
ま、どっちも“絶倫”になるらしいですけれど・・・
異性にプレゼントする時は注意!
ユニークな花姿が可愛らしいと、近年ガーデニングでの人気も高くなってきており、山野に自生しているイカリソウが盗掘されるケースが問題になっているそうです。
人気種で、熱烈な花言葉であるため、恋人に贈る花としてオススメしている花言葉サイトなどもあります。が、薬効を知って、ちょっと引いてしまう場合も少なからずあるやも知れません。
そういうの面白がったり、喜んでくれたりする相手かどうか、ちゃんと見極めてからプレゼントしたほうが良さそうです。
分類: メギ科イカリソウ属
学名: Epimedium エピメディウム(属名)
和名: 碇草、錨草
別名: 三枝九葉草(サンシクヨウソウ)
淫羊霍(インヨウカク)※生薬名
英名: Large flowered barrenwort,Bishop’s hat
開花時期: 4~5月 春の花
花色: ピンク、白、赤紫、黄など
草丈: 30~50cm 多年草
原産地: ヨーロッパからアジアにかけての温帯地方