日本人にとって、「ゴボウ」はもっぱら八百屋さんで売っている“食材”です。
が、ゴボウの根っこを野菜として食べているのは、長い間世界で日本と朝鮮半島くらいでした。西洋や中国では、ハーブや漢方など“生薬”として用いてはきましたが、根っこをおかずとして食べる習慣はありませんでした。(最近、和食ブームにより、食材としても若干注目され始めたようです)
一方、日本では農作物として栽培されている以外、野生のゴボウはほとんどありませんが、地中海沿岸からアジアにかけ、ユーラシア大陸では先史時代から広く自生しています。ヨーロッパでは、ゴボウは、野山に咲く“花”として一般認識されているのです。
イギリス、フランスやドイツなどでは、花言葉集に「ゴボウの花」が普通に載っています。
日本では馴染みがない花なので、日本での花言葉はほぼ西洋の直輸入かと思いきや、日本人がつけた日本独特の花言葉もちゃんとあります。
もくじ
ゴボウの花言葉
ゴボウ全般の花言葉
『私に触らないで』
『しつこくせがむ』
『用心』
『いじめないで』
『人格者』
西洋の花言葉
『touch me not(私に触らないで)』(英)
『importunity(しつこくせがむ)』(英)
『vous m’importunez(あなたはしつこい)』(仏)
『Du bist mir zu anhänglich(あなたはベタベタしすぎ)』(独)
ゴボウってどんな花?
ゴボウの花見たことある?
日本人の多くはゴボウの花を見たことがありません。
冒頭で書いた通り、日本のゴボウはほぼ栽培種です。花を楽しむ園芸用ではなく、ほとんどが畑や家庭菜園で収穫のために育てられています。
実は、ゴボウは、タネを蒔いて1年以上たった2度目の夏に花をつける2年草です。毎年作付けして収穫しているゴボウ畑で花を見ることはありません。
収穫しないで冬を越すと、翌夏に花が咲き、秋に結実します。農家で、タネを収穫するために育てているゴボウだけが、花を付けます。
日本では滅多に見られる花ではなく、日本人に馴染みがないのは当然です。
アザミに似ているけど、別もの
ゴボウの花は、トゲトゲのたくさんついたイガのような苞葉に包まれて咲きます。
紫色の頭花(小さな花がたくさん集まってひとつの花のようになっている花。キク科の花に多い)の形や、トゲがある様子が、アザミの花とよく似ています。が、アザミの仲間ではありません。同じキク科ですが、アザミはアザミ属、ゴボウはゴボウ属です。
アザミ属じゃないのにアザミに似た花というのは、案外いろいろあります。アーティチョーク(朝鮮アザミ)、ヒレアザミなどは、アザミ属のノアザミより、ゴボウの花に似ています。これらもアザミ属でもゴボウ属でもありません。
ノアザミ
アーティチョーク
ヒレアザミ
花言葉の由来
知らないうちに服に付いてくる
ゴボウの花が散ると、イガイガの中で結実してタネを作ります。イガは茶色くなって乾燥し、花茎からポロッと取れやすくなります。
イガのトゲの先は、何かに引っかかりやすく、引っかかるとなかなか取れない形状になっています。野山を移動する動物の体にくっついてタネを遠くまで運んでもらうことで、ゴボウは広範囲に繁殖してきました。
ヨーロッパでは、野山を歩く人の服にも、知らないうちにたくさんくっついてしまうことがよくあります。セーターやファーにくっつくと、毛に絡まってなかなか取れません。
『importunity(しつこくせがむ)』(英)
『vous m’importunez(あなたはしつこい)』(仏)
『Du bist mir zu anhänglich(あなたはベタベタしすぎ)』(独)
西洋のこれらの花言葉は、この“くっつくと取れない!”実の特徴から生まれました。
トゲトゲの見た目が威嚇的
『touch me not(私に触らないで)』(英)
イガのまるいトゲトゲした形が、ハリネズミが威嚇のために毛を逆立てたように見えるので、イギリスでは、ゴボウが近づくものを威嚇しているイメージの花言葉を付けました。
『用心』
『いじめないで』
日本では、この花言葉に影響され、警戒心をクローズアップしたような花言葉が付け加えられました。
食材に感謝
外来の花言葉は、どちらかというとマイナスイメージの言葉ばかりです。
が、ゴボウは長年、生薬・ハーブとして洋の東西で利用され、日本でも健康にいい野菜として食を支えてきてくれた食材です。
そんなゴボウのエライところに感謝する気持ちで、日本では
『人格者』
という敬意をこめた花言葉が作られました。
マジックテープ誕生のもと
無重力の宇宙ステーション内では、ものがやたらに浮遊しないように、ちょっと止めて置くための「面ファスナー」(マジックテープ)が、ものにも壁にも服にもたくさん設置されています。簡単に脱着可能な魔法のようなファスナーは、20世紀の大発明のひとつです。
この発明のきっかけは、ゴボウの実でした。
1948年、スイスのジョルジュ・デ・メストラル氏は、愛犬と山歩きした後、服にたくさんついていたゴボウの実の取れにくさを疑問に思いました。顕微鏡で観察した結果、引っかかりやすく取れにくいトゲの先端のメカニズムを発見し、それを応用して面ファスナーを作り出したのです。
西洋ではこのウンチクは有名です。ゴボウの実も花言葉も、西洋人には本当にとても身近なものなのでしょう。
分類: キク科ゴボウ属
学名: Arctium lappa アークチウム・ラッパ
和名: 牛蒡(ゴボウ)
英名: Burdock,Greater burdock
開花時期: 6~8月 夏の花
花色: 紫、白など
草丈: 40~150センチ 二年草
原産地: 北ヨーロッパ、ロシア、中国東北部