春の花の花言葉

ツクシの花言葉/花じゃないのに花言葉があるスギナの子

Written by すずき大和

生物分類学では、植物界はまず初めに

  • タネで増えるもの
  • タネ以外の方法で増えるもの

に大きく二分されます。

花は、タネを作るためのいわば生殖器ですから、当然後者のグループの植物に花は咲きません。が、胞子によって増えるタイプの植物の中には、「花言葉」がつている例が、実はいくつも見られます。

  • 苔類の「コケ」
  • 菌類の「シイタケ」
  • シダ植物の「ゼンマイ」「シダ」「スギナ」

これらにはみな花言葉があります。

スギナの花言葉は、スギナではなく「ツクシ」に付けられたものです。

“ツクシはスギナの子ども”

と、いわれますが、実際には、同じ地下茎から外観の異なる2種類の茎が出てきたものです。親子というより、兄弟という方が正しいでしょう。

  • 繁殖のための“胞子茎”が 「つくし」
  • エネルギー生成(光合成)のための“栄養茎”が 「スギナ」

春、真っ先に出てくるつくしは、頭の傘を開いて胞子を飛ばしきると枯れてしまいます。つくしに少し遅れて伸びてくるスギナは、ひと夏中雑草のように次々伸びて地面を緑のじゅうたんで覆っていきます。

胞子を飛ばすために一時期だけ出てくるツクシは、いわばスギナの花のようなものですね。



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もくじ

ツクシ(スギナ)の花言葉

日本の花言葉

『向上心』
『努力』
『意外』
『驚き』

西洋(英語)の花言葉

『Docility(従順)』
『Quiet(静か)』

ツクシ(スギナ)ってどんな植物?

採っても採っても生えてくる繁殖力

スギナは全身緑色で小さな枝を伸ばすように成長します。その姿がミニサイズの杉の木のように見えるので、「杉菜」という名前になりました。

スギナ


スギナも秋になると全部枯れてしまいますが、実は地下茎は生きていて、毎年ぐんぐん成長しながら広がっています。地下茎には、夏の間スギナが光合成によって生産したエネルギーがたくさん蓄えられており、翌春、その力でまた爆発的にツクシやスギナを発生させます。

野原でツクシやスギナが地面に広がっている風景は、ほっこりのどかな感じもしますが、農地や花壇の近くに繁殖されると、なかなか簡単に駆除できない、やっかいな雑草となります。夏は採っても、刈っても、数日ですぐにスギナが伸びてきてしまいます。

花言葉の由来

伸びの速さは仰天もの

ツクシもスギナも芽生えの時のスピードには目を見張るものがあります。

特にツクシは、一日で1㎝以上伸びることもあり、いきなり出現したように感じることもよくあります。

そのぐんぐん伸びる姿が、ひたむきな強さに感じられ、

『向上心』
『努力』

の花言葉が付きました。

『意外』
『驚き』

についても、その成長スピードの速さを表す、という解釈があります。

同時に、スギナとツクシの外観があまりに違うので、別の植物に思えるのに、実は根っこがつながっている同じものだった、という事実が意外な驚きだから、という解説もあります。

西洋の花言葉

スギナは北半球の温帯地方に広く分布しています。

西洋でもお馴染みの植物のようですが、外国語のサイトを検索すると、やっかいな雑草としての駆除方法や侵入種としての注意喚起の記事が多くヒットします。ガーデナーや農家にとっては、あまり好かれていない植物かもしれません。

ツクシを花と認識して花言葉など付けているのは、日本人くらいなんだろうな・・・と思ったら、イギリスにも花言葉がありました。

『Docility(従順)』
『Quiet(静か)』

成長力に着目した日本人の感覚とは正反対の、おとなしい印象の花言葉です。

ネットの英語サイトや図鑑の文献を調べましたが、由来まではたどり着けませんでした。

  • 春の野原ののどかな印象なのか、
  • スギナにくっついて出ているツクシが、従者のように見えたのか、
  • はたまた、ツクシの化身となった神話の人物でもいるのか・・・・

なんだか気になってしまいます。

シダ植物は進化の過渡期を物語る

ツクシの胞子はどうやってスギナになる?

地下茎でぐんぐん広がるスギナは、ツクシの胞子を遠くに飛ばすことでも繁殖地を広げていきます。

シダ植物の胞子は、タネと違って、落ちた先ですぐに芽が出て成長するわけではありません。胞子は発芽すると2㎝くらいの葉のようなもの(前葉体)になります。が、実はこれにはオスとメスがあり、どちらかひとつだけではスギナにはなりません。

オスの前葉体が出す精子が、水の中を泳いでメスの前葉体の中にある卵子とくっついて受精して、初めてスギナの赤ちゃんになります。

乾いた野原の土の上に顔を出すツクシの地下茎は、ずっと辿ると水辺に近い所で生まれた最初の赤ちゃんにたどり着くのですね。

シダ植物は種子植物の先祖?

地球の生命の進化を辿っていくと、種子植物の出現は、胞子植物より後です。

3億年以上前、生物はすべて水中に住んでいました。細菌類から始まった植物が、菌類、苔類と進化していくうちに、陸生になります。

シダ植物は、種子植物と菌類や苔類との間の時代に生まれた形態です。茎の中に水や栄養の通り道がある構造は、シイタケよりずっと花の咲く植物に近いです。

花が誕生する直前まで進化していながら、オスが水の中を泳いで受精するという形は、祖先の名残もまだ残しているわけです。進化の過程のシダ植物の神秘です。

ツクシの基本データ

分類: トクサ科トクサ属
学名: Equisetum arvense エクイセム・アルベンス
和名: 土筆(ツクシ)、杉菜(スギナ)
別名: 地獄草
英名: Horsetail
ツクシの時期: 3~4月 
草丈: 5~15cm(ツクシ)、20~40cm(スギナ) シダ植物
原産地: 北半球温帯地域


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筆者情報

すずき大和

花に心があったら、自分の花言葉についてどう思うだろう?と、変なことが気になる変わった子供が、成長してライターやってます。花言葉の由来をヒモ解いていくと、花より人の心が見えてきます。花言葉を添えて花を贈るなんて、日本人にはハードル高い行為ですが、まあとりあえず、のんびりウンチクを楽しんでもらえれば幸いです。