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ヤグルマギクの花言葉/完全な青が示す繊細で優雅な皇帝の威信

Written by すずき大和

矢車(ヤグルマ)とは、鯉のぼりを上げる竿のてっぺんに付いていて、風を受けて回る、矢羽の風車のような飾りです。

切り花や花壇でよく見る、丸くて可愛らしいヤグルマギクは、ちょうど端午の節句の頃咲きます。ほとんどが園芸用に改良された八重咲きの品種なので、矢車の形があまりピンときません。が、原種の野生種は一重咲きで、矢羽のように見える花びらの形がはっきりわかります。

和風の花名ですが、明治の中期にヨーロッパから伝わった外来種の菊です。もとは地中海地方原産で、人類最古の栽培種のひとつといわれています。

とても生命力が強く、西洋では麦畑の雑草として頻繁に見られるので、

「Cornflower コーンフラワー」(英)
「Kornblume コーンブルーム」(独)

と呼ばれています。“小麦の花”という意味です。

園芸種はピンクや白などもありますが、原種の青紫色が広く愛されてきた花で、最高級のサファイアの青色を

「コーンフラワーブルー」

と称することもあります。花言葉もそんな深い青色の美しさにちなんでいます。



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もくじ

ヤグルマギクの花言葉

ヤグルマギク全般の花言葉

『繊細』
『優美』
『優雅』
『教育』
『信頼』
『独身生活』

西洋の花言葉

『delicacy(繊細、優美)』(英)
『refinement(上品、優雅)』(英)
『délicatesse(繊細さ)』(仏)
『pureté(純度)』(仏)
『timidité(恥じらい、内気)』(仏)
『Ich gebe die Hoffnung nicht auf(希望をあきらめない)』(独)

ヤグルマギクってどんな花?

矢羽(やばね)の形の小さな花

一重咲きのヤグルマギクと鯉のぼりの矢車を並べてみました。

一重咲きヤグルマギク


こいのぼりの矢車


キク科の花は、小さな花がたくさん集まってひとつの花のように見えます。外側の矢羽みたいなのも、内側のおしべが飛び出して見えるのも、それぞれひとつひとつの花です。

神聖な力を秘めた特別な花

俗名の学名

「Centaurea セントウレア」

は、ギリシャ神話に出てくる半人半獣の「ケンタウルス(セントール)」から付きました。聡明で博学、多才なケンタウルス「ケイロン」が、ヤグルマギクを薬草として使っていた、という伝説が残っています。

野生のヤグルマギクの濃い青紫色は、あらゆる青い花の中で最も完全な青色だと評されていました。この青には、特別に人を癒す力がこもっていると、古代人はイメージしたのでしょう。

古代エジプトではまた、魔除けの力を持っていると考えられていました。ツタンカーメンの棺の上には、ヤグルマギクとハスとオリーブで作った花輪が残っていました。

花言葉の由来

繊細で上品な青

『delicacy(繊細、優美)』(英)
『refinement(上品、優雅)』(英)
『délicatesse(繊細さ)』(仏)
『pureté(純度)』(仏)
『timidité(恥じらい、内気)』(仏)
『繊細』
『優美』
『優雅』

小さな深い青色の花が集まったヤグルマギクは、西洋では、繊細で上品、ピュアなイメージの花となっています。

原種の青紫色はこんな色です。

コーンフラワー


麦畑の母の教え

『Ich gebe die Hoffnung nicht auf(希望をあきらめない)』(独)

ドイツの花言葉には有名なエピソードがあります。

ナポレオンが侵攻した時代、プロシア(今のドイツ)が攻め入られた時、ルイーゼ王妃は子供たちを連れて麦畑に隠れます。この時、王妃は咲いていたヤグルマギクで花冠を作り、動揺する王子たちを元気づけながら、王族としての誇りと威厳を持って敵に臨む覚悟を諭します。

この花言葉は王妃と王子たちの未来に託す志です。

『教育』
『信頼』

日本語のこの花言葉も、この麦畑の王妃の諭しの光景を表しています。

王子の一人は、やがてドイツ帝国の初代皇帝ヴィルヘルム1世となります。この時、王家の紋章をヤグルマギクに定めます。人々はヤグルマギクを「皇帝(カイゼル)の花」と呼び、帝政終了まで、ドイツの国花として扱われていました。

バチェラーのシンボル

ヤグルマギクの英語の別名のひとつに

「Bachelor’s button バチェラーズ・ボタン」

があります。バチェラー・パーティーのバチェラー、つまり独身男性のことです。

イギリスでは、なぜか未婚の男性がヤグルマギクを胸に指す習慣がありました。いわゆる「婚活中のサイン」ですね。

『独身生活』

の花言葉はここから付きました。

日本の花言葉サイトには、独身者(特に女性)にヤグルマギクを贈ると、

「行きそびれてるよ」

という嫌味になってしまうので注意!・・・みたいなアドバイスが書かれていることがあります。この花言葉を気にしてのことのようです。

が、バチェラーは男性のことです。女性の独身をイメージ付けはしません。

贈る側が男性ならば、せいぜい

  • 「今婚活中なんで、いい娘がいたらヨロシク」
  • 「僕と付き合ってみない?」

というメッセージというのが、本来のニュアンスでしょうか。

日本の花言葉解説の中には、言葉の文言だけ見て、意味や由来を適当に推測したようなものもたくさんあります。英語の花言葉を訳す時に微妙に意味の違う日本語を当ててしまったと思われる花言葉もあります。

花言葉文化はもともと西洋の習慣です。使いこなしたいなら、解釈については、元来の言語の由来もちゃんと確認したほうが失敗しないかも・・・。

ヤグルマギクの基本データ

分類: キク科ヤグルマギク属
学名: Centaurea cyanus セントウレア・キアヌズ
和名: 矢車菊(ヤグルマギク)
別名: 矢車草(ヤグルマソウ)
英名: Cornflower,Bachelor’s button,
Bluebottle,Knapweed
開花時期: 4~6月 春~初夏の花
花色: 青紫、青、紫、ピンク、白、赤など
草丈: 20~100cm 一年草
花持ち期間: 5日前後
原産地: ヨーロッパ東南部~小アジア


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筆者情報

すずき大和

花に心があったら、自分の花言葉についてどう思うだろう?と、変なことが気になる変わった子供が、成長してライターやってます。花言葉の由来をヒモ解いていくと、花より人の心が見えてきます。花言葉を添えて花を贈るなんて、日本人にはハードル高い行為ですが、まあとりあえず、のんびりウンチクを楽しんでもらえれば幸いです。