東北南部以南の日本全国で、戸建ての玄関先などに植えられているのをよく見るヤツデ。
だいたい1~3mくらいの低木ですが、時には6mくらいに育ちます。
手を広げたような形の葉は、とても大きく、常緑の濃い緑色で、幾重にも重なってたわわに出てくるので、なんとなく南国の植物のような雰囲気があります。東京ディズニーリゾートに行くと、ジャングルの密林ぽい感じを演出している場所に、たくさん植えられています。
が、南国原産の外来種ではなく、もともとは日本原産の固有種でした。とても古くから親しまれている植木のひとつで、各地に伝わる伝説の「天狗」は、必ずヤツデの葉の団扇を持っています。
江戸末期に、シーボルト医師がヨーロッパに持ち帰った多くの日本の固有植物の中にも入っていました。手入れがあまりいらず、丈夫で育てやすい常緑樹なので、西洋でも観葉植物として好まれ、世界に広まっていきました。
学名は「Fatsia japonica ファテシア・ジャポニカ」と付けられました。
ファテシアは、ヤツデ(八手)を「はっしゅ」と読んだとか、当時の江戸っ子の「八」の発音が「ふぁち」だったとか、諸説ありますが、日本語に由来しています。
花言葉も、日本のものが英訳されて伝わっています。
もくじ
ヤツデの花言葉
日本の花言葉
『分別』
『親しみ』
『健康』
西洋(英語)の花言葉
『Sensible(分別)』
『friendly(親しみ)』
『healthy(健康)』
ヤツデってどんな花?
球状についた花と実
ヤツデは、晩秋から初冬にかけて、2か月間ほど花を付けます。花茎を花火のように八方に広げ、球状に乳白色の花を咲かせます。
ひとつひとつの花が小さな球状の実になり、ゆっくり熟すと真っ黒くなります。翌年の春から初夏、かんざしの玉のような実をたくさんつけた姿が見られます。
葉のギザギザは8つではありません
大きな葉の淵はギザギザと指を広げたように分かれています。「ヤツデ(八手)」なので、8つに分かれていると思う人が多いかもしれません。
が、これは「たくさんあるもの」を表す数字として、末広がりの「八」が好まれて使われているだけです。実際は、7~11枚に分かれていますが、多くが奇数になっています。
花言葉の由来
花は賢さを表す
ヤツデの花は、同じ花の受粉を避け、確実に他の花の遺伝子を受粉できるように、長く飛び出しているおしべが先に成熟し、おしべの花粉を出し切った後にめしべが成熟する、という特殊な習性を持っています。花期が長いので、他の花のおしべが次々花粉を出し、先だって成熟した花のめしべに受粉されます。
花粉を運ぶのは虫ですが、冬場、昆虫が少ない時期に咲くので、特に甘さの強い蜜を出し、独特の臭いを放って虫を呼んでいます。
『分別』
は、ごみの分別の「分別(ぶんべつ)」ではなく、
“物事がよくわかっている”
という意味の「分別(ふんべつ)」です。
ヤツデの花の、より確実に受粉するためのメカニズムの賢さを表現しています。
『Sensible』
は、形容詞として、
「賢明な」
「気の利く」
という意味で使われる単語です。とても相応しい訳ですね。
厄除けと千客万来
『親しみ』
『健康』
この花言葉は葉のイメージから来ています。
ヤツデの葉は、生薬としても使われていました。その成分は殺虫効果もあるため、殺虫剤にも使われました。
また、葉枯れや痛みの目立たない、濃い緑の光沢がある肉厚の葉は、とても健康的なイメージがあります。
末広がりの名を持ち、害虫退治もしてくれる元気で丈夫なヤツデの葉は、家に入ってくる邪気も払ってくれると信じられていました。天狗の神通力のアイテムだったとか、門の近くや裏口に植えられることが多いのは、「厄払い」効果を狙ったものです。
玄関先でさわさわと風にゆらぐ大きな常緑の葉っぱは、大きな手で「おいでおいで」と呼んでくれているようで、「千客万来」という縁起かつぎの意味もあります。親しみを込めたウエルカムの気持ちを伝える葉っぱでもあるのです。
おもてなしの心を伝えるヤツデ
ヤツデは、西洋やアジアでも、ウエルカムツリーとして、門の脇に植えられたり、プランターに植えて屋内の観葉植物として鑑賞されたりしています。
育種も進み、よく似た花と実をつける同じウコギ科のアイビー(西洋木蔦)と掛け合わせてできた「ファトスヘデラ」は、フランスで開発されました。その後、日本にも輸入され、人気の観葉植物となっています。
ヤツデは、日本と世界を「おもてなし」の心でつないでくれているようです。
分類: ウコギ科ヤツデ属
学名: Fatsia japonica ファテシア・ジャポニカ
和名: 八つ手、八手
別名: 天狗の葉団扇
英名: Japanese Aralia
開花時期: 10~12月 初冬の花
花色: 白
草丈: 1~5m 常緑低木
原産地: 日本