秋の花の花言葉

シオンの花言葉/忘れたくない気持ちを永久につなぐ思い草

Written by すずき大和

「シオン」は、薄紫色の細長い花びらが、黄色い芯の周りにズラッとまあるく並んで咲く、キク科の花です。夏にすくすく伸びて、人の背丈よりも高くなり、秋になると花をつけます。

シオンは、古代に伝わっていた“日本昔話”の中で、既に不思議な力を持つ花として知られていました。この花のもたらすといわれる作用が、そのまま今も花言葉になっています。

いってみれば、“日本最古の花言葉をもつ花”のひとつです。



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シオンの花言葉

日本の花言葉

『君を忘れない』
『遠方にある人を思う』
『追悼』

西洋(英語)の花言葉

『忍耐(patience)』
『優美(daintiness)』
『愛の象徴(symbol of love)』

シオンてどんな花?

空き地のアレに似ているけど、雑草じゃありません

空き地などに自生している、白い小さな花が咲くキク科の雑草「ハルジオン」や「ヒメジョオン」と、名前も形も、ぐんぐん伸びるところも似ています。が、シオンはいわゆる“貧乏草”とは違います。

雑草ではなく、平安の頃から貴族も好んで庭草として植え育てていた栽培種です。

もとは中国から“生薬”として伝来しましたが、古代社会で高い位を表す「紫色」に近い花色をしていたため、観賞用の花として好まれ、栽培されるようになりました。漢字表記の「紫苑」はそのまま和の色名にもなっています。

花言葉の由来

世界の花言葉の歴史

草花に個別の意味を持たせて、何かのメッセージや象徴とする、という伝統や文化は、古くから世界中の多くの社会で見られます。

神話や民話も含め、歴史として語り継がれてきた出来事や、伝統的な行事の中で、特定の草花が何かの意味を象徴して使われてきた例はたくさんあります。

古代ギリシャの祭典では、“月桂樹は『栄光』を表す”ものでした。

聖書のエピソードから、“オリーブは『平和』の象徴”とされてきました。

求婚の意味で渡す花や、葬儀の時に死者に手向ける花が決まっている文化も各地に見られ、それぞれの花たちは『愛』や『追悼』のメッセージでもありました。

が、そんな特別な習慣によって意味が根付いていたわけでもない、多くの花々についても、ひとつひとつ花言葉を決めるようになったのは、19世紀のヨーロッパが始まりでした。フランスやイギリスで、挿絵入りの「花言葉辞典」の類が次々出版され、花言葉は一気に広まりました。

日本の花言葉の歴史

日本にも、近代明治以降、西洋の花言葉の慣習が伝来します。初めは外来花言葉辞典を翻訳して紹介することが多かったようですが、だんだん日本独自の花言葉も作られるようになりました。

今では、品種改良で新しい種類が生まれると、作った人が花の名前を命名するついでに花言葉まで決めるのが慣例化しています。

日本独自の花言葉がつけられる場合、日本や中国の故事や神話などに基づいて考えられたものもたくさんあります。中には、古の時代より既に、

「〇〇〇の力がある」
「〇〇〇を導く花である」

という“いわれ”がある花もあり、多くは花言葉もそれに準じています。

シオンの花言葉は、「今昔物語」のエピソードに基づく、といわれています。

忘れ草と思い草の話

今昔物語は、平安時代後期に、当時すでに説話として伝わっていた民間伝承(要するに、平安時代の人にとっての日本昔話)を集めてまとめた書物です。

「古事記」が、日本最古の歴史書(神話集)ならば、

「今昔物語」は、日本最古のおとぎ話集、といったところでしょうか。

今昔物語190番目の説話にシオンの話がでてきます。

「兄弟二人、萱草、紫苑を植ゑし語」というタイトルのお話。

父思いの兄弟がいます。ある時父が亡くなり、二人とも大変嘆き悲しみますが、その後出世した兄は、仕事が忙しく、頻繁に父の墓参りができない状態になってしまいます。兄は、早く悲しみを忘れようと、父の墓の傍らに「忘れ草」を植えます。

忘れ草とは、「見る人の思いを忘れさせてしまう」といわれている花のことです。

一方、弟は兄の態度を嘆かわしく思い、自分は絶対に父のことを忘れまいと、「思い草」を同じように墓の傍らに植えます。

思い草とは、「見る人の心にあるものを決して忘れさせない」といわれている花です。

忘れ草は「カンゾウ(萱草)」です。

思い草は「シオン(紫苑)」です。

花のおまじないが利いて、兄は父を忘れ、弟はずっと忘れず墓参りを続けました。

結果、弟は、その行いに感心した鬼から超能力のご褒美をもらって幸せな人生を送ります。

「忘れない」というメッセージ

物語の最後は、

“されば、嬉しきことあらむ人は紫苑を植ゑて常に見るべし。憂へあらむ人は萱草を植ゑて常に見るべし、となむ語り伝へたるとや。”

で終わっています。

「嬉しいことがあったらシオンを植えて、憂いがあればカンゾウを植えなさい」

という言葉は、近代までしっかり語り伝えられました。

西洋でのシオンの花言葉は、

『忍耐』
『優美』
『愛の象徴』

でした。

しかし、日本では、古来の意味を大事に、

『君を忘れない』
『遠方にある人を思う』

という花言葉を定めました。

亡き父を思う息子の説話からきているので、

『追悼』

という意味も付け加えました。

シオンは、貧乏草どころか、とっても高潔な人の心の情愛を表している花なのです。

シオンの基本データ

分類: キク科シオン属(アスター属)
学名: Aster tataricus アスター・タタリカス
和名: 紫苑(シオン)
別名: 鬼の醜草(オニノシコグサ)、十五夜草(ジュウゴヤソウ)
英名: Tatarian aster
開花時期: 9~10月 秋の花
花色: 紫、青
草丈: 50~200cm 多年草
花持ち期間: 5~7日
原産地: 東アジア、シベリア


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筆者情報

すずき大和

花に心があったら、自分の花言葉についてどう思うだろう?と、変なことが気になる変わった子供が、成長してライターやってます。花言葉の由来をヒモ解いていくと、花より人の心が見えてきます。花言葉を添えて花を贈るなんて、日本人にはハードル高い行為ですが、まあとりあえず、のんびりウンチクを楽しんでもらえれば幸いです。