茎の先端にたくさんの花が楯に並んで咲く花穂をつけるキンギョソウは、地中海沿岸の南ヨーロッパや北アフリカが原産といわれ、西洋では大昔から親しまれてきた花です。栽培の歴史も古く、園芸種としての種類も豊富です。
背丈が高いものも低いものも、花色や花穂の大きさも幾種類もあるので、ガーデニングや鉢植えにも重宝されています。花もちもいいので、切り花としても人気があります。
日本には明治時代に渡来し、園芸種として根付きました。唇弁が3つに裂けている花がひらひらと咲く姿が、金魚の尾ひれのように見えたので、「キンギョソウ」と名付けられました。これは、中国語も同じです。
東洋では、金魚は縁起のいいものです。が、花名とは裏腹に、花言葉はちょっとマイナスイメージの表現が並びます。
もくじ
キンギョソウの花言葉
キンギョソウ全般の花言葉
『おしゃべり』
『でしゃばり』
『おせっかい』
『図々しい』
『推測ではやはりNO』
西洋の花言葉
『graciousness(上品さ、優雅さ)』(英)
『deception(ごまかし、欺瞞)』(英)
『Je vous désire.(私はあなたを願っている)』(仏)
『désire(欲望、願い)』(仏)
『Du bringst meine guten Vorsätze ins Wanken.(あなたは私の気持ちを揺さぶる)』(独)
『verführung(誘惑)』(独)
中国の花言葉
『多嘴(おしゃべり)』
『好管閒事(おせっかい)』
キンギョソウってどんな花?
西洋の花の意味づけ
色彩豊富でひらひらと華やかな見栄えから、西洋ではキンギョソウは女性の優雅さを象徴すると捉えられています。
一方で、キンギョソウ属の学名は
「Antirrhinum アンテリナム」
ギリシャ語で
“動物の鼻面に似ている”
という意味になる造語です。
独特の花の形が、動物の顔のように見えたようです。
中世では、その鼻面は、仮面をつけた人の顔に例えられ、
“本心を隠しているイメージ”
が生まれました。
そこから、もうひとつの象徴性、
“欺瞞の兆候を示唆する”
という意味あいも持つようになりました。
花名の不思議
西洋では、学名の「アンテリナム」と呼ばれることもありますが、古くからある花なので、それぞれの言語の呼び名があります。
イギリスでは、
「Snapdragon スナップドラゴン」
と呼ばれます。直訳すると
「噛みつきドラゴン」
これは、ひとつひとつの花をそっとつまんで軽く押すと、上唇弁と下唇弁の間がぽっかり開くので、その形をドラゴンが口を開けた姿に見立てたものです。
- ドイツ語では、「Löwenmaul(ライオンの口)」
- フランス語では、「Gueule de loup(狼の口)」
と呼ばれています。
花言葉の由来
口パクパクの東洋の印象
『おしゃべり』
『でしゃばり』
『おせっかい』
『図々しい』
『多嘴(おしゃべり)』
『好管閒事(おせっかい)』
キンギョソウがヨーロッパから中国に伝わった時、その花名から、よくしゃべる人のイメージが生まれました。
西洋では、きちんと自己主張することは、重要な社会性として求められます。が、東洋では寡黙なことを美徳と捉える文化があるので、ちょっとうるさい人を揶揄するような花言葉が付けられました。
仮面の下に隠されたもの
『推測ではやはりNO』
『deception(ごまかし、欺瞞)』(英)
『Je vous désire.(私はあなたを願っている)』(仏)
『désire(欲望、願い)』(仏)
『Du bringst meine guten Vorsätze ins Wanken.(あなたは私の気持ちを揺さぶる)』(独)
『Verführung(誘惑)』(独)
西洋では、仮面のイメージからきた花言葉がたくさんあります。
イギリスでは、西洋の二つの異なるイメージをそれぞれ花言葉にしてあります。
フランスやドイツでは、隠していた本心は、
“相手への強い思い”
と捉えた花言葉となっています。
一方、日本では、隠している本心は
“拒否反応”
と捉えた花言葉になりました。
この辺の本音のイメージが洋の東西で逆転しているのも、双方の文化の繁栄のようで、面白いですね。
キンギョソウは観賞用以外の用途もあります
エディブルフラワー
キンギョソウの花は、古くから食用にもされてきました。
イチゴよりも多くのビタミンCが含まれているそうです。ビタミンCは熱で壊れるので、ケーキの飾りやサラダなど、生食で積極的に食べてください。
が、ちょっと加熱したくらいでは、鮮やかな花の色が落ちないので、パスタなどの熱い料理にも彩としても、多く使われています。なかなか使い勝手のよい食用花です。
魔除けのおまじない
キンギョソウはまた、強い香りを放ちます。
古代社会、今のドイツ地方には、キンギョソウが魅惑的な香りで人を惹きつける様子から、何らかの魔力が宿っている植物だと解釈され、切り花を吊るしておくことで魔除けとする習慣がありました。
西洋では、いわゆる、おまじない、お守りの花、のイメージがあったことも、花名はあまり可愛くないのに、女性の優雅さを称えるポジティブな意味合いの象徴につながったのかもしれません。
一方、金魚の名を持ちながら、マイナス解釈の花言葉の東洋。双方の逆転が面白い花です。
分類: オオバコ科キンギョソウ属
学名: Antirrhinum majus アンテリナム・マユス
和名: 金魚草
英名: Snapdragon
開花時期: 3~5月 春の花
花色: 赤、ピンク、白、オレンジ、黄、紫、複色など
草丈: 20~120cm 一年草(野生種は多年草)
花持ち期間: 7日前後
原産地: 南ヨーロッパ、北アフリカ