ネリネは、大正末期に西洋から入ってきたヒガンバナ科の園芸種です。
まっすぐ伸びた太目の一本の茎の先端に、直径3~6㎝くらいのユリに似た花が、短めの花茎に分かれて放射状に咲きます。6枚の花弁の反り返り具合やエッジの形状が、種類によって様々ありますが、小さめの花が10個以上集まって咲く種などは、華やかなひとつの大きな花のように見えます。
まっすぐな茎の先端に豪華な花が乗っている立ち姿は、遠目で見るとやはりヒガンバナによく似ています。花色はピンクや白が多く、反り返った花びらは光をいろいろな角度に反射してきらきらと輝くので、
“ラメ入りのヒガンバナ”
という感じです。
ヒガンバナは日本では長い間“墓地に咲く花”の印象が強かったため、観賞用としてはあまり人気がなく、ネリネもイマイチ売れ行きのいい品種ではありませんでした。
が、近年ヒガンバナが「曼殊沙華(まんじゅしゃげ)」と呼ばれ、群生地が観光名所として人気が出てきたのに伴い、ネリネも花束やガーデニングなどでの人気が高まっています。
一方、ヒガンバナが「エキゾチックで魅力的!」とガーデナーの人気が高い西洋では、花びらがきらきらに見えるネリネは、その美しさを称えて
「ダイヤモンドリリー(Diamond lily)」
と呼ばれています。
「ネリネ」という花名もまた、ギリシャ神話の中でも美しさで有名な海の女神「ネレイデス」からきています。そして、花言葉は、この女神の神話に由来しています。
もくじ
ネリネの花言葉
『箱入り娘』
『華やか』
『輝き』
『麗しい微笑み』
『また会う日を楽しみに』
『忍耐』
『幸せな思い出』
ネリネってどんな花?
アフリカ生まれ、西洋育ちの外来種
ネリネはアフリカ原産の球根植物です。30種ほどの原種が南アフリカ近辺のエリアに自生しています。寒さに強く、交配がしやすい特性があったので、17世紀にイギリスに渡って以降、ヨーロッパを中心に様々に品種改良が行われ、豪華な印象の品種がたくさん生まれました。
近代、日本に入ってきてからも、園芸家たちによって改良されてきました。
湿気に弱く、日本の梅雨が苦手なため、ガーデニングでもプランターや鉢植えで育てられることが多いです。花持ちがいいので、切り花やアレンジメントの人気も高いです。
ヒガンバナが終わる頃咲き始め、花期は1か月半くらいある、秋の花です。
ギリシャ神話屈指の美人に例えられる花
名前の元となった「ネレイデス」は女神の名前ではなく、海の神ネーレーウスの娘たちのことをまとめてこう呼びます。父王と共に、海底の宮殿(エーゲ海の底の銀の洞窟、という記述もあります)で暮らしていますが、大事に大事に守られ、宮殿内で踊ったり黄金の椅子に座って糸をつむいだりするばかりの、半ば軟禁された息苦しい生活をしていたとされます。
ネレイデスは50人いたとか100人いたとかという説もありますが、個々の神話が残る姫は、ポセイドン(海の大王神)の妻になったアムピトリーテーほか数名です。
が、みなそれはそれは美しい女性だったと伝えられています。勇者ペルセウスの伝説では、
“女王カシオペアが
「我が娘のアンドロメダはネレイデスより美しい」
といって、ポセイドンを怒らせる”
というエピソードがあります。
暗い森の中に群生していた、華やかできらきらのネリネは、それくらい圧倒的な美しさに見えたのでしょうか。
花言葉の由来
『箱入り娘』
あまりの美しさ故に、父からも溺愛され、宮殿内で大事に育てられたネレイデスたちのことです。
『華やか』
『輝き』
『麗しい微笑み』
これらの言葉も、彼女たちの美しさを称える表現です。
『また会う日を楽しみに』
この由来については、軟禁状態の宮殿暮らしの姫たちが、たまに何かの用で外に出た時に出会ったものごとの楽しさが忘れられない気持ちではないか、という説が多いようです。
いつもいつも父の目の届く宮殿に閉じこもっているのですから、そりゃ、たまの外出の解放感とワクワクはたまらないものがあったでしょう。
黄金の椅子に座っていても、
心は『幸せな思い出』を恋しく思い、
窮屈な毎日は『忍耐』の日々だったのかもしれません。
そう思うと、ゴージャスで派手派手な印象ですが、ちょっぴり切ない花なのかな、って気もしてきます。
分類: ヒガンバナ科ネリネ属
学名: Nerine ネリネ(属名)
和名: 姫彼岸花(ヒメヒガンバナ)
英名: Nerine, Diamond lily
開花時期: 10~12月 秋~初冬の花
花色: 赤、ピンク、白、青、紫、黄、オレンジなど
草丈: 30~40cm 球根性多年草
花持ち期間: 7日前後
原産地: 南アフリカ