枝分かれした茎の先端に、20㎝ほどの大きな花を咲かせるダリアは、洋の東西を問わず、ガーデニングでも切り花でも、人気が高い園芸種です。
夏の花のイメージが強い人が多いと思いますが、中にひとつ、朝夕の寒さを感じる初冬の時季(11~12月頃)になって初めて開花する、ちょっと個性的な品種があります。
普通のダリアは、草丈1mくらいが平均的ですが、この冬咲きのダリアは、太くて節のある丈夫な茎がぐんぐん成長し、高いものは3~5mにもなります。
空にそびえ立つかのように、大きな花を開いている様子から、学名は
「Dahlia imperialis(皇帝のダリア)」
そして、下から仰ぎ見る花姿は、低木のようにも見えるので、英名は
「Tree dahlia(木のダリア)」
と、付けられています。(でも多年草です)
日本では、この学名と英名から、
「皇帝ダリア」
「木立(こだち)ダリア」
と、呼ばれています。
西洋では、ダリア属は広くまとめられ、同じ花言葉でくくられています。が、季節が異なる花をいっしょにしてしまうのは、日本人の感覚では馴染まなかったのでしょう。特別に、この冬のダリアには、他の夏咲きの花とは違う日本の花言葉が付けられています。
もくじ
皇帝ダリアの花言葉
『乙女の真心』
『乙女の純潔』
花言葉の由来
そびえ立つ皇帝の花だけど「乙女」
威厳ある立派な名前と花姿であるにもかかわらず、とっても萌え感のある花言葉です。
どうしてこんな“純情ラブリー”な響きの言葉になったのでしょうか?
その理由は、「皇帝ダリア」で画像の検索をしてみるとわかります。
多くの写真が、青空をバックにピンクの花が写っています。
人の背丈より高くなり、枝の先端に花が開きます。どうしても、下から大きな花を仰ぎ見るような形になるため、空をバックに撮る構図が多くなるのです。
11月といえば、木枯らし1号が吹く季節、秋空に流れていた羊雲やうろこ雲が吹き飛ばされ、青く澄み渡った冬の空が見られるようになる頃です。皇帝ダリアの花色は、一部白や赤もありますが、一般的にはピンクか薄紫が多いです。
菊が終わり、牡丹が咲く前のこの時季、こんなに大きな花が開く花木はあまりありません。本格的な冬を目前に、穏やかな快晴の中、ふと見上げる視線の先にある、空色とピンクのコントラストは、なんともいえない爽やかなビジュアルです。
いろいろな解説を見ると、どれもこのビジュアルから生まれた花言葉であると説明されています。澄んだ空に浮かぶ優しいピンク色の花に見つめられ、思わず“萌え~”を感じたどこかの人が、こんな花言葉を付けてしまったのでしょう。
なぜ皇帝ダリアだけが冬に咲く?
なかなか咲かないダリア
皇帝ダリアは、春に苗を植えると、他のダリアと同じように、夏の間にぐんぐん成長します。が、いっこうに花芽が付かず、草丈の成長は更に続きます。やがて秋になると(10月頃)、大きく高く伸びた枝の先に蕾をつけます。その後も花茎をぐんぐん伸ばし、11月を過ぎる頃咲き始めます。
ガーデニングが趣味の人のブログを見ていたら、冬咲きであることを知らずに植えて、
「このダリア、今年は花が咲かないのかな・・・」
なんていいながら、忘れたころに蕾が付いて驚いた!という、のんきな記事もありました。
いつまでも明るいとダメなの
皇帝ダリアは、実は他のダリアにない特性があります。それは、
“光の当たる時間がある程度短くならないと、花芽をつけない”
という性質です。日中の時間が短く、早く夜になるようにならないとダメなんです。
こういう性質の植物のことを
「短日植物」
といいます。人工の光を当てることで開花の時季を遅らせる「電照菊」と同じです。
日本では、鉢植えで小さく作られた皇帝ダリアもよく見かけますが、うっかり夜でも電気がよく当たる所に置いておくと、花が咲かないことがあるので、育てる時は注意が必要です。
「私、いつまでも明るくされるのダメなの」
なんて、さすが、男性の萌え処を心得た乙女な花です。
って、そこ、変な妄想しないように!?
分類: キク科ダリア属
学名: Dahlia imperialis ダリア・インペリアル
和名: 皇帝ダリア
別名: 木立ダリア
英名: Tree dahlia
開花時期: 11~12月 初冬の花
花色: ピンク、紫
草丈: 2~5m 多年草
原産地: メキシコ、中央アメリカ、コロンビア、ボリビア