春の花の花言葉

ムスカリの花言葉/希望と絶望、相反する心を語る花言葉

Written by すずき大和

1960年、イラク北部のシャニダール洞窟で、約5~6万年前のネアンデルタール人の墓が発見されました。旧石器時代の人類に既に“埋葬”という文化があったことは知られていましたが、この時、人骨と一緒に大量の花粉が見つかりました。

氷河期の名残の過酷な環境の中で、人の死を悼み、周りに花を敷き詰めて埋葬したことは、愛情を尊ぶ精神文化が当時の人類に既にあったということです。

この発見により、ネアンデルタール人は、現代人と同じ“ホモ・サピエンス”の仲間である、と分類されるようになりました。

この、故人を埋め尽くしていた花が「ムスカリ」でした。

ムスカリとは、人類誕生の頃からの長い付き合いがあるのです。

鮮やかな青色の花が印象深いムスカリには、希望を感じる前向きな花言葉がいくつもあります。と同時に、絶望的な花言葉も持ち合わせています。

ネガティブな花言葉の由来は世界的に共通していますが、明るい花言葉の由来がどこの国でもあまりよくわかりません。

野生種も栽培種も、西洋ではとても身近な花となっています。花の意味の由来すら忘れられてしまうくらい、あまりに長い間、各地の人々の生活に馴染んできたのかもしれません。



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もくじ

ムスカリの花言葉

ムスカリ全般の花言葉

『通じ合う心』
『黙っていても通じる私の心』
『寛大な愛』
『夢にかける思い』
『明るい未来』
『失望』
『失意』
『絶望』

西洋の花言葉

『usefulness(有用、有益、実用的)』(英)
『disappointment(失望)』(英)
『l’amour romantique(ロマンチックな愛)』(仏)
『faiblesse(弱点)』(仏)

ムスカリってどんな花?

花名はムスクから

「ムスカリ(Muscari)」

は、属名(学名)です。香水成分として有名な「ムスク(moschos)」からきた名前です。

ムスクは日本語で「麝香(じゃこう)」と呼んでおり、牡鹿の内臓から採る動物性の香り成分で、大昔から洋の東西で使われてきた香料です。野生のムスカリは、南アフリカや、地中海沿岸から西南アジアにかけての広い範囲に40種類ほど分布していますが、古代からある品種の中に、ムスクに似た強い甘い香りのものがあるそうです。

現在、世界で栽培種として出回っている品種は、主に2種類の園芸種です。これはそんなに香りはありません。

独特のビジュアルと育てやすさ

草丈10~30㎝ほどで、茎の先端に、コロッと膨らんだ壺型の花が密集した花穂を付けます。青や青紫の花色が一般的で、ブドウが逆さになったようにも見えるため、西洋では、

“ブドウヒヤシンス”

という意味の

「Grape hyacinth」(英)
「Blauwe druifjes」(蘭)

などと呼ばれています。愛嬌のある面白いビジュアルの花です。

ムスカリ花アップ


秋に球根を地植えすると、冬の間に茎や葉が育ち、春に一斉に花を咲かせます。水やり以外にあまり手間がかからず、植えっぱなしでも毎年花が咲きます。群生させると青いじゅうたんのような花畑になります。

ムスカリ花畑


花言葉の由来

重宝される園芸種

青くて可愛らしい花姿は、控え目で、暖色系の春の花を引き立たせる効果があります。花期の重なるチューリップなどと隣り合わせにされたり、花壇の縁を囲むように植えられたり、寄せ植えのアクセントにも使われることが多い園芸種です。

丈夫で育てやすく初心者でも失敗しないこともあり、ガーデナーにとっては使いやすく、何かと重宝されています。

『usefulness(有用、有益、実用的)』(英)

イギリスのこの花言葉は、そんなところからきているのかもしれません。

『通じ合う心』
『黙っていても通じる私の心』
『寛大な愛』

これらの言葉も、

“花壇の花々との取り合わせの相性がいいことからきている”

という説があります。

欧州での花の評判

フランスでは、ムスカリは愛のメッセージを伝える花のひとつです。白花のムスカリはプロポーズの印とされる地方もあります。

『l’amour romantique(ロマンチックな愛)』

は、そんなフランスらしい花言葉です。

花言葉というか、花の伝説として、スペインでは

“ムスカリは魔女やゴブリンの魔法と魅力を呼び起こす”
“エルフの魔法とウィザードの魅力に私たちを導く”

などといい伝えられています。

怪しげというより、ファンタジックな世界につながるイメージのある花のようです。

そういえば、神教の巫女さんが振る鈴の形にも似ています。日本の花言葉

『夢にかける思い』
『明るい未来』

は、そんなスピリチュアルパワーのイメージが生んだ、希望や招福の表れでしょうか。

ヒヤシンスの青は悲しみの象徴

「ブドウヒヤシンス」と呼ばれるムスカリは、ヒヤシンスと同じ仲間ではありませんが、近い品種です。

ヒヤシンスにはギリシャ神話の悲恋の逸話があり、欧州では

“ヒヤシンスの青い花色は悲しみの象徴”

とされています。

ムスカリも青花が一般的なため、

『disappointment(失望)』(英)
『faiblesse(弱点)』(仏)

という花言葉につながったといわれています。

『失望』
『失意』
『絶望』

これら日本の花言葉も、西洋の花言葉に準じています。

マイナスイメージの言葉があまりにも強烈なので、それを払しょくするために、わざと希望に満ちた明るい花言葉もたくさんつけた、という一説もあります。

確かに、花壇の名脇役扱いの花のメッセージが『絶望』では可哀そうすぎますね。

ムスカリの基本データ

分類: キジカクシ科ムスカリ属
学名: Muscari ムスカリ(属名)
和名: 葡萄ヒヤシンス
英名: Grape hyacinth
開花時期: 3~5月 春の花
花色: 紫、青、白、黄
草丈: 10~30㎝ 多年草
花持ち期間: 5~7日
原産地: 西南アジア、地中海沿岸地域


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筆者情報

すずき大和

花に心があったら、自分の花言葉についてどう思うだろう?と、変なことが気になる変わった子供が、成長してライターやってます。花言葉の由来をヒモ解いていくと、花より人の心が見えてきます。花言葉を添えて花を贈るなんて、日本人にはハードル高い行為ですが、まあとりあえず、のんびりウンチクを楽しんでもらえれば幸いです。