「薺(ナズナ)」は、俗にいう「ペンペン草」の正式な和名です。
どこにでもある道端の雑草ですが、人間との関りの歴史はとても長い植物です。
もともとは東ヨーロッパから中東、東アジアに至る温帯から亜熱帯地域に広く自生していたようですが、大陸間の交易が進むに従い、世界に広まりました。日本には、弥生時代頃に、中国経由で入って来たと見られています。
地味で素朴な見た目ですが、情熱的な花言葉を持っています。
もくじ
ナズナの花言葉
ナズナ全般の花言葉
『あなたに私のすべてを捧げます』
『あなたに全てをお任せします』
『贈与』
『無病息災』
『春の到来』
西洋の花言葉
『I offer you my all(あなたに私のすべてを捧げます)』(英)
ナズナってどんな花?
ペンペン草の名前の由来
ペンペン草の“ペンペン”は音を表します。
茎の先端に白い小さな花が咲き、その下に縦に連なっているハート型の緑の葉のような分部を“三味線のバチ”に見立て、三味線を弾く音を表している、というのが一説。
昔の子どもたちは、ハート型の茎の根本を少し剥いて、軸の周りにブラブラと鳴子(なるこ)がぶら下がるようにしてゆすって遊びました。ハート型がぶつかり合う「ペンペン」というほのかな音を楽しんだのが由来、というのがもうひとつの説です。
あのハート型は葉のように見えますが、果実です。だんだん膨らんで茶色く硬くなります。ナズナの花は、茎が伸びるに従い、下から上へと順々に咲いていくので、花の下には先に散った分がどんどん結実して連なります。
花言葉の由来
羊飼いの財布とは?
日本では三味線のバチですが、西洋ではあのハート型の果実のことを昔の羊飼いたちが使っていた財布の形に見立てていました。
学名「Capsella bursa-pastoris」の“bursa-pastoris”は、「羊飼いの財布」という意味です。ヨーロッパのほとんどの言語で、ナズナはこう呼ばれています。
- 英名:shepherd’s purse
- 仏名:bourse à berger
- 独名:hirten geldbörse
- 蘭名:herders portemonnee
- 西名:bolsa de pastor
大昔の羊飼いは、うちへ帰ると財布をそのまま妻や母親へ預けていたそうで、このことから、ナズナの果実は
“相手を信用して全部おまかせする”
というニュアンスを示唆しています。
それがそのまま
『I offer you my all』
という花言葉になりました。
日本語では
『あなたに私のすべてを捧げます』
と訳され、ロマンチックな告白のような花言葉になっていますが、本来の意味は、
『あなたに全てをお任せします』
のほうが近いようです。
『贈与』
は、そういうニュアンスから派生した花言葉です。
春の七草食べて長生きしよう
『無病息災』
『春の到来』
日本ではナズナは「春の七草」のひとつです。お正月のごちそうに疲れた胃腸を休めるために、1月7日に新春の頃(今の暦では2月半ばの早春時季)に芽吹く野草をいれた「七草がゆ」を食べ、その年の無病息災を祈る歳時記です。
これらはそこに由来する花言葉ですね。
花言葉はどこ?
世界で愛用されてきた生薬
ナズナは世界中どこの道端にも咲いていますが、花言葉情報がなかなかみつかりません。多くの言語で検索すると、ほとんどが効能や食べ方の解説です。
ビタミン、ミネラルの含有量が豊富で、血圧をさげる成分も含まれるため、
- 生理不順や便秘の解消や肝機能を整える
- 腹痛・高血圧・目の疲れを和らげる
- 止血剤、解熱剤、利尿剤
などの効能を期待されて、古代から洋の東西を問わず世界中で使われてきたハーブ・生薬でした。ガーデニングやギフトにする花のイメージではなかったのかもしれません。
花屋さんでも売っている日本
早春の季節に健気に咲く姿は、春を告げているようにも見えます。が、道端に群生する様子は見るからに雑草っぽいといえば雑草っぽい・・・花径3mmくらいの小さな4弁の白い花は、よーく見ると清楚で可愛らしいのですが、確かに地味ではあります。
日本では、荒れ地の雑草の代名詞のように「ペンペン草も生えない地」のような表現をされることがあります。一方で、詫びさびの心を慈しむ日本文化では、逆にそういう野趣溢れるところに親しみを感じる向きもあるようで、ナズナの花は、生け花やアレンジメントにも使われています。
分類: アブラナ科ナズナ属
学名: Capsella bursa-pastoris
カプセラ・ブルサパストリス
和名: 薺(ナズナ)
別名: ぺんぺん草(ペンペングサ)
三味線草(シャミセングサ)
薺菜(さいさい)※生薬名
英名: Shepherd’s purse,Capsella
開花時期: 2~5月 冬~春の花
花色: 白
草丈: 20~40cm 越年草(2年草)
花持ち期間: 3~4日程度
生息地; 世界の温帯・亜熱帯地域
原産地: 東ヨーロッパからアジア