「オダマキ」という花をご存じですか?
初夏になると、ひょろりと伸びる細い茎の先に、直径4㎝くらいの可愛らしい花を下向きに咲かせる多年草の植物です。寒さに強く、色や形の種類が豊富で、育てやすいので、ガーデニングで花壇に植えられることも多い花です。
花の形が非常にユニークなので、一度見ると印象に残りやすく、名前は知らなくても、
「あ、これ見たことある」
と思う人もいるのではないでしょうか。
花の名前は、そのヘンテコリンな形から連想されるものに由来しています。
「何に見えたのか」
「何を意味するのか」
地域や時代によっていろいろ解釈があります。
花言葉の由来も、何の象徴になっているのかにまつわるエピソードからきています。
もくじ
オダマキの花言葉
オダマキ全般の花言葉
『愚か』
色別の花言葉
赤色の花の花言葉
『心配して震えている』
紫色の花の花言葉
『勝利』
『勝利への決意』
『必ず手に入れる』
白色・または赤色の花の花言葉
『あの人が気がかり』
オダマキってどんな花?
裏側にツンツン角がでている変な形
この花の何がそんなに特徴的で面白いのでしょう?
よく見ると、3段構造の花びらがあり、一番外側のものは、花の後側(裏側)に向けて、ツンツンと角が立っているように細い突起状に伸びています。ツンツンの先っぽは尖っているものも丸まっているものも、長いものも短いものもあります。この角が、花をなんともいえないこっけいな形に見せています。
実は、
このツンツンした所は花びらではなく「距(きょ)」という突起で、
その内側の大きな花びらのようなのは「ガク」で、
一番内側の閉じ気味で筒状になっているところが本当の「花びら」です。
世界に70種類くらいあるオダマキの仲間は、色や花びらの形や大きさはいろいろ違えど、基本的にこの構造を持っています。
蕾は羽を閉じて首を伸ばした鳥みたい
距は蕾の時からツンツンしています。
園芸種は多くがヨーロッパ原産です。蕾の形が“鳩”みたいに見えるといわれ、イタリア語の鳩「コロンボ」から
「コロンビーナ」
という俗名が付き、これが転じて英名は
「コランバイン(Columbine)」
になりました。
花言葉の由来
『愚か』の由来は花と関係ないエピソード
『愚か』とは、随分な花言葉です。
中世にヨーロッパで流行った道化芝居に出てきた、道化師の恋人(あまり賢くない人物)の名前がコランバインだったので、「愚か」になったといわれています。
恋人の名前は、鳩の形に似た杯をもっていることから付けられたそうですが。オダマキの花とは直接関係ないのに、なぜか花言葉はそこから取られました。
角が生えるのは嫉妬の象徴
また、ヨーロッパには、赤いオダマキは“捨てられた恋人の象徴”という風説があります。
「寝取られ男は嫉妬の角が生える」
という、古くからの言葉があり、怒って角が生えているように見える真っ赤なオダマキは、不倫や不義を働かれた側を連想させたのです。
『心配して震えている』
という花言葉は、そんなイメージから生まれました。
葉っぱの形がライオンの歯?
もうひとつ、
“ライオンはオダマキの葉を食べることで強い力を発揮する”
という言説もあります。
本当にライオンが食べたかどうかはわかりませんが、葉っぱの形がライオンの歯に似ていた(?)ことから沸いた話、という説もあります。ライオンの力の素なので、
『勝利』
『勝利への決意』
『必ず手に入れる』
という力強い花言葉が、紫のオダマキに付けられました。
日本名の由来と日本的な花言葉
日本の野山にも、2種類のオダマキの原種が自生しています。日本独自の花言葉の中には、白または赤い花には、
『あの人が気がかり』
という意味があると書かれているものがいくつかあります。
これは和名オダマキの由来となった苧環(おだまき)のエピソードに関係があります。
苧環は、糸を巻き付けた糸巻きのことで、日本人には花の形がこれに見えたようです。
苧環は、もともと平安時代の七夕祭りのお供え物でした。
織姫が機織りの名人だったことから、最初の七夕は、五色の糸を供えて裁縫や機織の上達を星に願う祭でした。苧環に巻かれた五色の糸は、やがて五色の短冊に変わっていきます。
が、織姫・彦星が1年に1度だけ逢う七夕に付きものの苧環は、歌舞伎の世界では、その後もずっと恋人同士の逢瀬を描く場面の小道具として、象徴的に使われてきました。
恋人を思い、逢いたくて逢いたくてたまらない心が、花言葉になったようです。
番外編/キリスト教の象徴
花言葉とは違いますが、オダマキは、中世のキリスト教の世界では、
『聖母マリアの悲嘆』
『イエスの受難』
の象徴といわれていました。
縁起悪そうに聞こえるかもしれませんが、キリスト教にとってイエスの受難(十字架の磔)は、イエスが神の子として生まれ変わる前提なので、不幸ではなく、逆に福音につながるものです。
- ひとつの茎から6つ花が付くオダマキは、旧約聖書に出てくる「六つの賜物」の象徴
- 葉の先が3つに分かれる形(三裂葉)は、キリスト教の「三位一体」の教えの象徴
と解釈されていたそうです。
そんなことを聞くと、なおさら、
なぜ、後世で花言葉をつける時に「愚か」にしたんでしょうか?
と思えてきます。
やっばり形がヘンテコリンに見えるから?
そういえば、ピエロの帽子のツンツンした形にも似ていますね。
分類: キンポウゲ科オダマキ属
学名: Aquilegia アキレギア(属名)
和名: 苧環(オダマキ)
別名: 糸繰草(イトクリソウ)、アキレギア
英名: Columbine
開花時期: 5~6月 初夏の花
花色: 紫、赤、白、ピンク、黄、青など
草丈: 30~50cm 落葉性多年草
花持ち期間: 4~5日
原産地: アジア、ヨーロッパ、北米